お誘いは想定内

「由美さん」

「綴君。お待たせ」


 二日ほど前、突然綴君からラインがあった。なんでもこないだ車を貸してくれたことへのお礼だとかで、鈴木君と一緒に美味しいお店を探してくれていたらしい。

 そこまで気にすることでもないと思うけど、こういうところをちゃんとするのが、綴君と鈴木君だなよな。と思ってしまう。

 今日来たのは、駅前にあるショッピングモール……の何故か裏の駐車場。なぜ? でもこうやって同じ時間に待ち合わせすると、なんかデートの前みたいでちょっと嬉しい。

 まあ、鈴木君も一緒に来るけどね……。


「鈴木君は?」

「ああ……それが……」


 綴君は頬を指先で掻きながら、苦笑いしつつ「夏風邪だって」

 あの鈴木君でも風邪を引くんだと思った。


「ごめんね由美さん。あいつがセッティングしてくれたんだけど」

「風邪ならしかたないよ。でも……それならどうする?」


 お店の場所はどうにかなるにしても、鈴木君をのけ者にするのはどうも性に合わなかった。勿論、綴君も同じ気持ちだったので、「お店は別の日にしようか」と言ってくれる。


「そうだね」

「本当にごめん。お礼だったのに」

「いいよそれくらい。またの機会にしよう?」

「うん。じゃあ、せっかくだし。どこかぶらつこうか?」

「ん……うん!」


 なんとなく……鈴木君が来ないと言われたところから、少しだけこのことは予想していた。けれど、やっぱり直接本人からそう言われると嬉しい。

 というかこれは、念願のデート!


 心の中でガッツポーズをしてから、「どこいこうか?」と質問する。


「ん~。俺はどこかってのは、実はないんだよな。由美さんは」

「私も特には……しいていうなら、静かなところに行きたいかな?」


 人が多いのはちょっと疲れるし、できれば人通りが少ないとこでゆっくりとしたい。それに、もしかしたら……ちょっと接近できる機会が増えるかもしれないし。


「それなら……公園があったから、そこに行こうか?」

「うん!」

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