おバカな妹と気だるい兄
滝皐(牛飼)
おバカな妹
「お兄ちゃん。私を好きにしていい代わりにお金をください」
いつものように表情の変わらない顔で、俺の妹である佐藤真澄はそう言った。俺はと言うと、特に気にも止めずソファで漫画を読んでいる。
「……」
無言を貫いていると、おそらく妹がいるであろう方向から衣擦れの音が聞こえた。さすがに何をしているのかと思って見てみると。今まさに部屋着のジャージのズボンを下ろしたところだった。
「……何してるの?」
驚きはあったが妹のパンツなど日常的に見ているため、ありがたみなんてあったものではない。風邪をひく前にズボンを履いた方がいい。
「こんな格好だから、お兄ちゃん興奮しないのかと思って。下着なら興奮するかなって」
「あ、好きにしてってやつのことね」
唐突に脱ぎたいのかと思った。妹が変態になってなくてよかった。
「けど真澄。何も着てないのと、着てる服が乱れてるの、どっちがより一層萌える?」
真澄は一瞬考えて、何かを思い付いたのか、パタパタと部屋を出た。
~閑話休題~
「これだな」
真澄はワイシャツに下は下着だけという。いわゆる彼シャツ状態という、至高の一つに数えられる装備で現れた。
「それなら萌える」
親指を立ててグッジョブと意思表示をした。
ワイシャツの第二ボタンまで開帳して、そこらは見える素肌がなんとも男心を擽ってくる。これは合格だな。
「よくやった。兄ちゃんが教えてやれることはない。今後も精進しろよ」
「わかった」
真澄の頭をポンポンの軽く叩いて誉めてやり、俺は部屋を後にする。
「……あれ? なんのお願いしてたんだっけ」
兄の財布は守られたのだった。
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