家に戻る
公園に来て、適当にぶらついて……正直これ以上やることがあるのかと問いたい。
実際問題、さっきから少しずつだけど気まずい時間が増えて来てるし、これは早々にショッピングモールに戻って良いかもしれないな。
隣に座る由美さんに考慮してのことだったが、やはり女性と二人で外出というのは思ったよりも考えさせられる。気を使うような間柄じゃないのは理解してるけど、それだけでは収まれない感情というのも存在している。
俺としても、男として女性に優しくしたいという感情もあるし、せっかくの休みなんだから、由美さんに残念な思いはして欲しくない。どうせだったら笑顔で帰って欲しい。また明日とも言って貰いたい。次も一緒に遊びたい。
ならばここで動かないのはいけないことだろう。またショッピングモールまで戻るのは骨が折れるが、うだうだと言っている場面でもないようだ。もう少しだけ休んだら、当初の予定通りそれとなく促そう。
「綴君」
「ん? どうかした?」
「私、いきたいところできちゃった」
「いきたいところ?」
「……綴君の家」
「……えっ?」
~~~
「……」
ふと手を止める。
今日はお兄ちゃんが鈴木さんと一緒に、由美ちゃんにこないだの車のお礼を兼ねてご飯に行くと言っていた。早くても夕飯までには戻ると聞いていたし、事前に由美ちゃんからも連絡は来ていたので、特に気にも止めてなかった。
けれどなんだろうか。こればかりは本当に直観とか、女の勘とかいう表現しか出て来ないんだけど。ともかく、厄介事が舞い込んできそうな予感がする。
「……お兄ちゃん。押されると途端に弱くなるからな~」
由美ちゃんのことは信頼してるし、告白とかはしないはず。けれどそれは由美ちゃんからであり、お兄ちゃんからではない。
本人は軽いジャブのつもりでも、案外それがクリティカルヒットすることだって往々にしてあることだ。ってことを、以前ちーちゃんが言っていた気がしたのを思い出した。
折れることはないにしても、揺らぐことはありそうで……私は課題の手を止めて、落ち着かない様子のまま部屋の片づけを始めた。
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