図書館での兄妹

 さて。俺の方は資料集め終わったけど、真澄の方は大丈夫かな?

 ちゃんと探しているようだったけど、直ぐにあっちにこっちに興味が逸れるあいつのことだから、今頃小説とか読んでそうな気がするが……。


 まず持って来ていた料理本なんかが置いてあるスペースを覗く。まあ居るわけはない。次に哲学書などが置いてあるスペースを確認する。そこにもいない。


 どこにいるんだ?


 絵画、デザイン本が中心に置かれたところを覗く。するとそこに真澄はいた。


 デザイン本……。


 一冊の本を熱心に読んでいる真澄。


「真澄」

「んっ。お兄ちゃん」

「何か見つけたか?」

「うん」


 そう言って表紙を見せてくる。空間レイアウトに関する本だった。


「そういうのに興味があるのか?」

「う~ん。よくわからないけど、楽しそうだなって思って」

「ああ……なんとなくわかるよ」

「そう? なんか意外だね」

「そうか? 意外とこういうのに興味持ってる人、多いと思うけどな」


 真澄には言っていないが、俺の部屋には雑誌レイアウトの本が幾つか並んでいる。自分の将来のことを考えた時、そういう物が必要になると思ったからだ。


「でもそうか……真澄もなんだな」

「私も?」

「ああ」

「お兄ちゃんも?」

「俺も」

「そっか」


 真澄は本を手に微笑んだように見えた。


「じゃあこれにする」

「いいのか? 自由研究なんだろ?」

「自由研究だからだよ。自由に研究しようよ」

「確かに。一本取られたな」


 自由に研究するんだから、選ぶのも真澄の自由。俺が口出すことじゃないよな。


「借りてこよ?」

「うん」


 けどそうか。やっぱり真澄の何だな。ここまで来ると、やっぱり血筋ってことになるのかね。


「……母親譲りかね」

「ん? お兄ちゃん?」

「ん? いや、何でもない」


 そういや、親父は元気にしてるかな。金は入ってるから問題ないとは思うけど。たまには帰って来ればいいのに。

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