素麺を食べるの兄妹

「……飽きる」


 素麺を啜りながら、真澄は俺にそう言った。

 蝉の声が外の方で、けたたましく鳴り響く夏の昼間。ここ数日、昼食のレパートリーが枯渇している。昨日は蕎麦、一昨日は素麺、その前は冷やし中華だったか。ともかく、冷たい麺類が続いている。

 確かにこれだけ麺類が続くと、さすがに味に飽きが出てくるよな。わかる。


「けど、家には今麺しかないぞ?」

「わかってるよ~。けど味が飽きる。特に素麺は味気ない」

「素麺だけに?」

「面白くない」

「別にボケたわけじゃないんだけど……」


 まあ、素麺が味気ないというか、食べ続けると飽きるというのは非常によくわかる。


「よし」

「何すんの?」


 リビングの机に置かれてるスマホを取りに行き、グーグル先生に『素麺 アレンジ』とレシピを聞くことに。

 その中から真澄が好きそうな物をピックアップする。


 えっと。この中で家にあるのは。


「ごま油、食べるラー油、酢……いやもういっそガツンと変えちまうか」

「おお。お兄ちゃん、久々にやる気?」

「俺も味に飽きたからな。真澄、納豆ネバっといて」

「ラジャー」


 嬉しそうに冷蔵庫から二パックほど納豆を取り出す。俺はオクラと鰹節を取り出して、オクラを輪切りに。さらに醤油、砂糖、ごま油などをちゃちゃっとあえて、和風ドレッシングを完成させた。


「真澄。納豆とその麺持って来て」

「いいよ~」


 底の深い丸皿を取り出し、そこにすでに茹でてある麺と混ぜた納豆とオクラ、ドレッシングをかけてその上に鰹節を乗せる。


「即席、ねばねば素麺」

「いえ~い」


 嬉しそうにしてるが、即席なので味の保証はしない。でもまあ、外れは無いだろ。


 席に戻った俺達は、今一度「いただきます」と挨拶をしてから食べ始めた。


「うん……美味いな」

「麺以外の触感も加わって、控えめにいって最高だよ、お兄ちゃん」

「ならよかったよ」


 こうやって美味そうに食ってくれると、作り甲斐があるもんだ(表情自体は変わってない)。


「そうだ、後で買い物行くぞ」

「うん。何買うの?」

「食糧だよ」

「じゃあさ。帰りにアイス買って行こうよ」

「帰りな」

「絶対だよ?」と念を押されたが、俺は「はいはい」と聞き流した。

 それよりも、何を買うのかリストアップしないとな。面倒だけど、無駄な買い物をしないためにやらないと。

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