空気読んだと思ったじゃろ?
さてさて。今頃つづりんと由美ちゃんは、俺がお勧めしたお店に向かってるかな~?
ショッピングモール内。夏休みということもあり、家族連れや中高生で賑わう館内は、人でごった返していた。
俺は今ショッピングモールの1Fにある、観葉植物を丸く囲んだベンチの座って、スマホを確認している。
今日のはつづりんと由美ちゃんと三人でカフェでランチと思っていたが、せっかくなのであの二人をデートにでもしてやろうと、俺の親切心が働いてしまった。なので来てる最中に仮病を使って休むことにして、俺は一人ショッピングモールにいる。
わざわざショッピングモールの裏側にある駐車場を選んだ理由としては、そこからの方が例のお店に近かったから。別にショッピングモールの前でも良かったのだが、人通りが多いてあの二人は疲れるだろうと思ったから、というのが大きい。だがその配慮がいい方向に転がった。おかげで誰にも見つかる心配もない。
得意げにラインを見ていたら、つづりんから連絡が入る。
俺がここにいることも知らずに、由美ちゃんとデートか~。しかもお勧めのお店で優雅にランチ。にくいね~つづりん!
な~んて思ってたのに、あの馬鹿ときたら『由美さんと話して、お店は三人揃った時にしようってことになった。早く風邪治せよ』と言ってやがる。
今だけはその優しさいらない! でもありがとう! つづりん大好き!
たく……俺の作戦は徒労に終わったわけだが、致し方なしだな。俺のことは気にせず、デートだけはしてくれることを願おう。間違っても帰ろうかなんて言ってくれるなよつづりん。
つづりんに返信を終える。それとほぼ同時に、別の人からラインが飛んでくる。その人に場所を伝え、ベンチから立った。
驚くなかれ、俺は親友との約束をブッチして別の人とのデートと洒落込もうと思っている。まあお相手の人は冗談でもそんなこと言ってほしくないとは思う。けれど男女が二人でショッピングや食事や観光なんかすれば、それは紛うことなきデートだろうと俺は思う。そこに恋愛感情なんとなくともな。
実際。彼女のことは好きではあるが、はっきりといって恋ではない。単純に可愛らしい対象としか思っておらず、それ以上でもそれ以下でもない。恐らく彼女からも、同じような印象だろう。
ただの仲の悪くない知り合い。その程度の関係だ。
その彼女が姿を表す。
育ちの良さから伺える気品のある落ち着いた服装。とても高校生が出せる大人っぽさではない。白いブラウスに、ネイビーカラーのワンピース、それに白パンツ。白を基調としたのトートバックを肩から下げており、足元は深い青色のヒール。スタイルもあいまって、モデルさんだな、と思ってしまう。
「私を呼び出すなんて、いい度胸ですね。鈴木さん」
「といいつつも、結構気合入った格好してるね。田中さん」
「適当に選んできたんですけど……?」
服選びのセンスが凄い……。
「とはいえ早かったのは事実。急いで来てくれたの?」
茶化すように言うと「はっ倒しますよ?」とこめかみに怒りマークが浮かぶくらい怒っている。
「じいやが買い物のついでに送ってくれたんです。本当はゆっくり歩いてあなたを待ちぼうけさせるつもりだったんですけど、じいやに感謝してくださいね?」
「じいや、ありがとう……」
顔も知らないけど。
「それで? 私を呼んだ理由はなんですか?」
「ん~? デート」
「はぁ……はっ?」
「だから、デートだよ。今日一日、俺の暇つぶしに付き合ってもらうだけだけどね」
「帰ります」
踵を返して立ち去ろうとする田中さんに、「もちろん報酬は弾むよ?」チラリとスマホの画面を見せる。
「……それは!?」
「真澄ちゃんの秘蔵写真。中学生バージョンさ」
「なぜそんなものが!?」
「まだスマホ高校のだからね。その時のが残ってるの」
「それが報酬?」
「好きでしょ?」
田中さんは一度大きく唸った後に、「仕方ないですね」と頷いてくれた。
「今日一日だけですよ?」
「OK。二次元で鍛えたデートプランを使うときが来たよ」
「気持ち悪い」
心底そう思ってるその目が、存外心に突き刺さるんだよね。痛いわ~。
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