後ろの座席はお通夜ですか……?
運よく綴君の隣を勝ち取りはしたけど……これって、裏を返せばあなたに好意を寄せていますって言ってるようなもんだよね? 別に今更な感じはするんだけど、綴君は何故か私の気持ちには気づいていないようだし(鈴木君曰く)。さすがにあからさま過ぎたかな?
チラチラとこっちを確認する真澄ちゃんの視線は痛いし。鈴木君に助けを求めようにも、なんか田中さんといい雰囲気だし。そもそも一番後ろから声掛けたらそれこそ変な感じだし……。
ああ~もう。何をうだうだ考えてるの私は。せっかくの綴君の隣なんだから、ここは少し積極的にアピールしていかないと駄目じゃん。水着だって新調したし。できればこの夏で、綴君の視線をこっちに向けたい。異性としてもっと意識して貰いたい。
だからここは私から動かなきゃ駄目だよ!
「綴君」
「由美さん」
声をかけたのとほぼ同時に、綴君からも声をかけられ固まる私。
「「ごめん。先いいよ……」」
さらに被って固まる私。
「「……あのさ」」
もう……嬉しいのやら悲しいのやらわからないよ……。でも頑張れ私。時間は限られてるんだから、話そうよ私。
「綴君!」
「あっ、はい」
思いの他、大きな声が出て恥ずかしいです。
「えっと……」
でも話しって何を話せばいいんだろう。普段考えて話してないから、何言えばいいのかわからないんよ。
「えっと……水着」
そう、水着! 海に行くんだから水着の話題はありだよね!
「小学生とか水着、中に着てきたりするよね~」
「えっ……? うん。そういえばそうだね……」
何の話しをしてるんだろう私は。ここは新調した水着の話しでも……いや待って。それじゃあ新しくした水着見て欲しい人みたいになる。布面積が少ない服を見て欲しいって、ちょっとした痴女だよ!
誰が痴女よ!
私だよ! 知ってる!
「つ……綴君は、水着どうした?」
「えっ? 普通に持って来たけど? ……まさか由美さん」
「それはないから安心していいよ。ごめんね紛らわしい話題振って。水着新しいの買ったりしたのかな?」
「いや。まだ高校のが着れたから、今回はそれでいいかなって思って」
「ああ~。やっぱり、男子だとそうなるんだ」
「由美さんは……その……」
照れ臭そうに頬を掻く仕草が可愛らしくて、ちょっと頬が熱くなる。
「綴君が、選んでくれたでしょ?」
「……うん」
「……」
「……」
不味い。これは……話題をミスったかも。
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