夏です

「お兄ちゃん。夏です」


 唐突に、扇風機の風に当たりながらアイスを食べていた俺に、真澄はそう告げた。


「夏だな」


 というか、それ以上のリアクションに困る。


「夏と言えば?」


 マイクなど持っていないのに、握った架空のマイクを向ける。


「えっと……暑い」

「うん。暑いね」

「……夏休み?」

「今だね」

「……アイス」

「私も食べたい」

「冷凍室に入ってるぞ」

「わーい」


 質問の意味とは?


「って違うよ!」


 冷蔵庫に行く途中に振り返り、俺に方に歩み寄って抱き付いて来る。


「今度は何だ?」

「夏と言えば!?」


 だからさっきからなんの謎かけなんだ!

 夏と言えば……? 今までのは違うんだから……。


「プール?」

「もう一声」

「……海?」

「海! 海行こう!」


 海……初めっからそう言えよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る