春になったので

 桜の花が咲き始めたころ、珍しい連絡があって、怠い体に鞭打って祝日に外へと出向いていた。

 都市開発が進みつつある駅前にやってきて、俺を呼びだした張本人を探す。

 祝日だし人通りが多いし、2年近く会っていないのにその子を見つけるのは難しいだろうな……。まあ駅前にいれば向こうが見つけてくれるだろうな。

 丁度予定の時間になったが、今の所連絡は入っていない。まあ元々ずぼらな奴ではあったし、遅れてくるのは想定の範囲な――。


「せんぱ~い!」


 声がした方に振り向いたと同時にドスンと腹部に衝撃を受けた。声の主が体当たりしながら抱きついて来たのだろう。真澄よりも小さ目で、それなのにパワフルな性格の彼女。


「痛いんだけど? 阿子あこさん」

「先輩なら大丈夫ですよ」


 名前は古谷阿子ふるやあこ。俺の二つ下の後輩で、高校生活で鈴木と同じくらい一緒の時を過ごした女の子だ。

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