兄の友達がこんなに二次元を愛している

「はぁ~」

 学食の定食を食べながら、鈴木が唐突に溜め息を吐く。俺はゆっくりと箸を動かしながらも、ご飯を進める。しかしなんで食べるために顎を動かさなきゃいけないんだろうな。正直疲れる。なんか飲み物みたいなのでお腹も膨れて、尚且つ健康にいいものが発明されないだろうか。

「はぁ~」

 そんなことを考えていると、またこれ見よがしに溜め息を吐いた。これ以上放置すると面倒なことになりそうな予感がしたので、仕方なく話しかける。

「どうした? 今日は共食いじゃないぞ?」

「俺は川魚でも海魚でもないからな? 確かに魚みたいな名前だけどな? いや、そうじゃねぇんだよ」

「魚以外に何があるというんだ」

「魚から離れろ」

 はい。

「いやさ~、さっきメアリーの話をしてたらさ~。浮気したみたいでこまりちゃんに申し訳ないというか~」

 ゲームの中のキャラ相手に浮気も何もないと思うけどな……それにお前さっき自分で過去は振り返らない主義みたいなこと言ってなかったか?

「あ~早くこまりちゃんとイチャイチャしたいー!!」

「……そうだな」

 適当に流していると、鈴木の後ろに女子二人がやって来る。

「あの、鈴木君。もし今日暇があったらなんだけど」

「悪いけど俺、早く家帰らないといけないから」

 女子の誘いをきっぱり断る。彼女たちは残念そうに去って行った。

「こまりとイチャイチャしたいのに現実リアルの女なんか構ってらんね~つの。あ~早く帰りて~」

 そういえばこんなことが高校の時にもあったな……いつものように一緒に帰宅している時に、鈴木が唐突に声をかけられて。

『あの、鈴木君。今日暇? 暇だったら』

『いや、暇じゃなからな』

 というやりとりが、一年の前半ほぼ毎日のように……。

「……」

 こいつ、二次元オタクじゃなかったら、かなりモテモテなんじゃなかろうか?

 目の前では残念なイケメンが、うわ言のように「こまり……こまり……」と呟いていた。

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