兄の友達がこんなに二次元を

「つづりん。お~いつづりん」

「……あれ? 俺いつの間にか寝てた?」

「そりゃあもうスヤスヤスピスピ気持ちよさそうに」

 そうか……まあ特別聞いてなきゃいけないって訳じゃないし。いちおうこんな時のためにボイスレコーダーは起動してたし。

「もう講義は終わったのか?」

「今はお昼休憩中。飯行こうぜ」

「そうだな。今日は忙しくて弁当作り忘れたから、お前と同じで学食だな」

 俺は普段お弁当を持参しているが、今日はどうしても布団から起き上がりたくなく、弁当を作る時間を割いて睡眠を貪ったのだ。真澄は特に何も言ってはいなかったが、少し残念そうにしていたのを覚えている。

 なるべく早く起きようとは思ってるが、思ってるだけじゃ駄目なんだよな。気持ちを新たに、早く起きる努力をしよう。

「いつも思ってるけど、妹ちゃんが作ってくれるの?」

「いや、食事を当番制にした時に、弁当もその日の担当が作るようにしてる。今日は俺が寝坊したから、作ってないんだ」

「じゃああの弁当、つづりんが作ってるのもあるのか! お前はいいお嫁さんになるよ」

「夫の間違いじゃないのか?」

 そんな何気ない会話をしながら、俺はボイスレコーダーにちゃんと講義の内容が入っているかどうか確認をする。離れていたとはいえ、講義はマイクを使って行うため、遠くでも音を拾うことは可能だ。

『あの時のことは今でも覚えてる。ロザリーは泣きながら俺に行かないで! 行かないで! って叫んでてな。だけど俺は決めてたんだ、俺にはメアリーしかいないって!』

 入っていたのは、あの時熱弁を振るっていた鈴木の声だった。先生の声はマイクを使っているのに遙か遠く。もはや何を喋っているのか聞き取れないレベル。

「なあつづりん。今日のAとBどっちのセットにする?」

 無言で俺はボイスレコーダをしまう。

「俺はAだな」

 よし、このことはなかったことにしよう。

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