真澄の行方は

「真澄がいなくなったって……いつ?」

『真澄ちゃん、私たちより先着替え終わったから、外で待っててもらってたんだけど、着替え終わって出てみたら、何処にも見当たらなくて。ごめん綴君。私。大丈夫なんて言ったのに、私』

「落ち着いて由美さん。一先ずもう一度、田中さんと一緒に更衣室の方探して貰っていいかな? 俺は別の方を探してみます」

『……うん。わかった』

「大丈夫ですよ。必ず見つかりますから」

『うん』


 取り合えず落ち着いたようで、由美さんは『見つけたら連絡する』と、しっかりした声色で返してくれてから、電話を切る。


「つづりん。真澄ちゃんは?」


 俺たちの神妙なやり取りに不安になった鈴木たちも、心配そうに見てくる。俺は真澄が目を離した隙にどこか行ってしまったことを教え、これから探しにいくことを伝えた。


「俺も行きます!」


 すぐに弘樹君が名乗り出てくれる。なので、荷物番を鈴木に任せ、俺と弘樹君の二人で探しに行くことに。


「真澄を見つけたらすぐ連絡してくれ」

「はい」


 お互い別れて、真澄を探しに行く。更衣室周りは、由美さんたちが探しているはずなので、俺は少し離れた屋台などがあるエリアに向かう。

 真澄は、色々と変な行動は取るし、兄の俺でもわからないことだらけだけど、それでも理由もなく居なくなったりはしない奴だ。たぶんあいつの中でなんかしらの理由があって、それで一瞬いなくなっただけ。だとすれば、その理由さえ掴めれば、居所は把握できる。


 とは言っても、やっぱり真澄の考えなんて理解できないし。あいつの思考回路って、本当に読めないからな。


「あっつ……」


 炎天下の中、人混みを縫いながら歩いてるから汗が凄い。飲み物が欲しくなる。けど、それは真澄を探した後に──。


 飲み物?


 屋台の一角。クーラーボックスに氷水を溜めて、缶ジュースやペットボトルを販売しているところがある。そこをよく見ると、見覚えの後ろ姿がそこにはあった。


「真澄!」

「お兄ちゃん?」


 振り向いた真澄は、俺がいることに理解が追い付いていないのか、頭に?マークが浮かんでいる。


「どうしたの?」

「心配させるな」

「えっ?」

「由美さんが、真澄が探してもいないって言うから、どっか行っちゃったのかもって焦ってたぞ」

「あっ……ごめんなさい」


 自分のしたことを理解したのか、素直に謝る。


「でも、さすがに大袈裟だよ。私だって高校生なんだし」

「高校生でも。お前は女の子なんだから、少しは自分のことを大切にしてほしい」

「女の子……」

「そうだろ?」

「……うん」


 まあ。ナンパとかで連れてかれなかっただけ、まだいいか。

 真澄も反省しているようで、先ほどから俯きがちだ。


「飲み物買うんだろ?」

「うん……皆にも。でも何買えばいいかわからなくて」

「そうだな。無難にポカリとかにしとこう。買ったら戻るぞ? 皆心配してる」

「うん。ごめんね」

「いいさ」


 俺を含めて、皆怒ってはいない。それだけはわかる。

 真澄の頭をガシガシと、少し乱暴に撫で回す。


 さて。由美さんたちに報告しないとな。

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