後輩とのデート②

 阿子に連れられ、もう八時過ぎだというのに俺と阿子が通っていた高校まで向かった。スタジオのあるところからだろ電車で二駅分なので、そこまでの距離ではないが、駅から10分くらい歩くので若干遠い。つくころには8時40分も過ぎたころになった。


「うわ~。夜の学校ってどうしてこう恐いんですかね?」

「だな。なんていうか……こう怖気立つというか、純粋な恐怖を感じるよな」

「とかいいつつ、お化けを信じていない先輩なのである」

「お前本当に、俺のことならなんでも理解してそうで恐い」

「大抵のことなら知ってますよ? これでも在学中は引っ付いてましたからね」


 そこは否定してくれよ。と思うところはあるが、確かに阿子はよく俺に引っ付いて回っていた。そのせいで、阿子と付き合ってるんじゃないか? と一時期話題にもなってたな。

 そこは阿子自身が否定したので、いつの間にか収まっていたが。


「先輩、知ってました?」

「何がだ?」

「学校の七不思議?」


 業とらしくお化けのポーズを取る阿子に、俺は鼻で笑った。


「七不思議ね」

「とはいえ、私も一つしか知りませんが」

「七不思議じゃねぇーじゃん」

「一不思議ですが。でも確かめてみませんか?」


 そんなことだろうとは思ったけれど、まさかでもあった。


「不法侵入だぞ?」

「だ~いじょうぶですよ。体育館見て下さい」


 阿子が指差す方には、散々お世話になった体育館がある。こんな時間なのに、まだ誰かが利用しているのか、電気が付いていた。


「大学のバレーチームが夜間使用してるんです。そのせいで校門はまだ空いてますし、巡回の警備員さんも先生もいます。校舎に鍵はかかってますが、校門をくぐる程度なら問題ないですよ」

「よく知ってるな。というか、もしかしなくても一度入ったのか?」

「試せることは試す主義なんです。私」


 ニカッと笑う。阿子に、高校の時の記憶が蘇る。

 新曲を作っている時に、いいリズムが出なかった時、とにかくなんでもいいからやっていた。その時に、今みたいな顔で『試せることは全部しないと、勿体ないですよ』と言っていた。


 変わってないな、こいつ。


「それじゃあレッツゴー!」

「はいはい」

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