兄の友達が

「最近遊んであげられなくってさ~。寂しがってないといんだけど」

「安心しろ。今満面の笑顔だぞ」

 むしろ、この子が今この瞬間泣いたら、俺は今世紀最大の叫び声をあげるかもしれない。

「いやいやわかってないな~つづりんは」

 安心しろ。わかりたくもない。

「この子はね。親がいなくて、頼れるのが俺だけなんだよ。だけど自分が甘えてしまったら、俺に迷惑がかかるって思ってて、そのせいで素直になれないんだ。だから今も、この笑顔の裏には苦悩を抱えているんだよ」

「…………そうか」

 ギャルゲーは奥が深いんだな。理解出来ない。

「お~愛しのこまりちゃ~ん」

 画面越しに頬ずりする様は、見ていて気色が悪い。だが人の好みは人それぞれ、口出しするものではない。

「さ~て進めようかな~」

 講義中に進めるとは、さすが廃人プレイヤー。

「まずはイヤホンをさして……あっ」

「ん? どうした鈴木?」

「こまりが……こまりが死んだ」

 そう言って、画面が真っ暗なゲーム機を向けてきた。

「……ゲームのバッテリーがなくなっただけじゃないか?」


 

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