妹の勘は当たっていたと証明された

「今日はお兄ちゃんと同じ布団で寝たいです」

「……なんて?」

「今日はお兄ちゃんと同じ布団で寝たい――」

「一言一句間違えず言わなくていい。なんでそんなこと思ってるってのを聞いてるんだけど」


 ご飯を終え、お風呂に入って、リビングゆっくりとしていたところに、真澄が突然ぶち込んできた。

 別に悪い訳じゃ無いけど、いくら兄妹とはいえ、この歳で同じ布団で寝るのはどうなのだろう。

 さすがにそれは不味いだろうと考えた俺は、「さすがにそれは」と言葉を濁したが、枕も準備OKでいつでも俺の部屋に突っ込める体制が整っていることに気付く。

 そして真澄の顔を見ると、ギンギンと目が輝いているように見える。


 これは……断ると面倒だな。


「今日だけだぞ」

「さすがお兄ちゃん。私のことをよくわかってるね」

「もはや強引だったと思うけどな」


 苦笑いしながら、一緒に部屋に向かう。

 しかし。真澄が一緒に寝たいなんて、小学生以来じゃないか? しかも確か2年生ぐらいまでだったはず。それ以降は一人でずっと寝てたな。なんとも思ってなかったけど、もしかしたら気を使わせていたのだろうか? 母親はいなかったし。父さんも海外に出ることが多くて、全然家に帰ってこなかったし。想像以上に寂しい環境のはずなのに、弱音一つ吐かなかったもんな。


 まあそれも今更な感じはあるけど、ちょっとかわいそうだったかもな。


 部屋に入り、真澄はそのまま俺のベットにダイブする。


「埃立つからやめろ」

「はーい……んっ?」

「どうかしたか?」

「お兄ちゃん。ちょっと正座」

「はい? なんで?」

「いいから」


 そう言って真澄は俺の布団の上で正座して、俺は床に正座する。なんだこの状態。俺は今なんで正座させられているんだ?


「お兄ちゃん」

「はい」

「私がいない間に女の人連れ込んだでしょ」

「……」


 おう。えっ? なんて? なんでそのことを真澄が知ってるの? いやまあ連れ込んだけどあれはほぼ不可抗力というか。いやまあ下心が無かったわけではないけど、でも結局は下で寝た訳だし。ていうかそもそもなんで。


「なんでそんなこと思うんだ?」


 すると真澄は掛布団、そして枕を手に取り、「これが証拠だよ」と突きつける。


「ただの枕と掛布団だな」

「そうだね。これはお兄ちゃんのだよ」

「そうだよ」

「でもなんで他の人の、それも女の人の匂いがするのかな?」

「えっ? 匂い?」


 そんなもの感じるのだろうか? 嗅いでみるがわからない。


「真澄の勘違いなんじゃ?」

「私がお兄ちゃん以外の人の匂い間違える訳ないでしょ?」


 久々のマジモードの真澄にたじろぐ。真顔も相まって相当に恐い。


「私の見立てでは、由美ちゃんと見た」


 おいマジかよ。人も当てるのかよ。


「当たってるんだね」


 心を読まないでください。


「情状錫杖の余地はないよ。お兄ちゃん」

「言い訳をさせてください」

「駄目です。今晩は私を抱いて寝てください」

「女の子が私を抱いてとか言わないの」

「じゃあ抱き枕にしてください」

「余計に勘違いされちゃうからやめて本当に」


 ただでさえ変な兄妹だと思われてるんだから。


「む~!!」


 よくわからないが、かなり怒らせてしまったのはわかった。しかたない。


「今日だけだぞ」

「当たり前だよ!」


 ……さいですか。

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