結局兄には勝てない
「真澄。悪かったって」
「ふーん」
「この通り謝るからさ」
「ふーん」
「真澄」
「ふーん」
翌日。休みだと言うのに特に休まず。俺は真澄に謝り続けていた。いつものように真澄の気が済めば解決すると思っていたが、そうは問屋が卸さないようで、日を跨いだのにも関わらず、真澄は拗ねたままだった。
「勝手に家に上げたのは悪かったって。それに由美さんを下のベットで寝かせる訳にもいかないだろ? 鈴木だっていたんだし」
「ふーん」
ずっとこの調子だ。口もきいてくれないので、対処に困る。ここまで怒らせたのは、小学校以来だな。
あの時はどうやって仲直りしたんだっけ? 確か俺が……。
そこまで考えて、苦笑いをする。しかし試してみる価値はあるかもしれない。熟考を重ねて、ダメ元でもいいからやってみるかと思い立った。
~~~
考えに至って数時間。そろそろいい頃あいだろう。俺は冷蔵庫の中から自家製プリンを取り出し、三時のおやつの時間に合わせて、一人テレビを見ている真澄の目の前に持って行く。
「お兄ちゃん特性プリンはいかがですか?」
「特性……プリン……?」
「真澄のために作りました」
「私のために、お兄ちゃんが……」
「おやつにしよう」
「する!」
この食いつき方。あの頃とそっくりだな。
結局、プリンを餌に話をつけ、今回の件は事なきを得た。しかし、成長の見られない妹姿に、俺は少し不安になるのだった。
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