迫りくる夏に向けて

 ある日の休日。珍しくも俺は外に出ていた。特に用がなければ家でダラダラと過ごしていた派の俺ではあるが、今日は妹を連れ出して、ショッピングに来ている。

 というのも。


「お兄ちゃん。これとこれだったらどっちがいいかな?」

「あんまり露出の少ないほうがいいんじゃないのか?」

「え~。ビキニの方が可愛いの多いんだけどな~」

「そうなのか?」

「うん。だからこっちとこっちだったらどっちが良い?」

「じゃあ水色」

「はーい。ちょっと試着してみるね~」


 とまあこんな感じに、妹の水着を買いに来ているのだ。

 別に去年のでいいだろと思うが、なんと真澄さん、この一年で胸囲が増えたらしく去年の水着が入らない。思ったよりぱっつりとした姿を見させられ、真澄は「きついけど入るよ」とどこか得意気だったので、焦って買い物を提案したのだ。

 たぶんあのままだったら、そのまま着て行ったに違いない。兄として、そんな姿を人様に見せる訳にはいかん。


「じゃーん」

「おお~。可愛いじゃないか」

「そう? ふふ~ん」


 水色の水着にフリルの付いたちょっと子供っぽい水着。まだ高校生だからいいが、ちょっと子供過ぎるような気もしなくないと思った。


「でも子供っぽいかもな」

「本当? じゃあどれがいいかな?」

「う~ん。これとか?」


 俺が選んだのは、柄物の水着で、まるでスカートのように胸元部分を隠すトップスに、ホットパンツを思わせるアンダー。ビキニスタイルだが全体的に防御力は高い。


「こういうのが趣味なの?」

「そういう訳じゃ無いけど」


 真澄はいうても胸がある方の人間ではない。だからこういうスタイルが似合うと思っての選択だった。


「ふ~ん。まあいいけど、ちょっと着てみる」


 また更衣室の中に入って良く真澄。ちょっと疲れたな。

 長い時間いる訳じゃ無いが、女性物の水着のところに男が一人立っているのだ。かなり気を使うし、視線が痛い。下着売り場じゃないことを幸運と思うことで、なんとなく自分を許している。


「早く帰りたいな~」


 そうぼやいていると、「綴君?」という声が聞こえた。振り向くと、そこには由美さんが立っている。

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