しかし妹の心は兄でいっぱい

 あ~……凄く残念だ。


 座席に凭れかけ。もらったトッポをポリポリ食べつつ、後ろの二人を気にする。

 本当だったらお兄ちゃんの隣は私だったのに、勝負は時の運だからしかたないけど、まさか由美さんに取られるとは……。


 あの一件以来、由美さんとは少しだけ仲がよくなったと思う。連絡する回数も増えたし(主にお兄ちゃん絡みで)、本当に稀だけど、二人で外に出ることもしている。昔の私だったらありえないようなことをしているが、別に由美さんと二人きりになるのは嫌いではない。

 ただその時に毎回思い知らされるのは、本当に由美さんはお兄ちゃんのことが好きなんだということだ。妹の私でさえ舌を巻くぐらいだから、相当なんだろう。まあでなきゃ……あんなこと言わないもんね。


 チラリと後ろを確認する。二人共固まって動いていないが、お互いを意識してのことなんだろう。


 でもだからといって、お兄ちゃんを渡そうとは思わない。約束したから、心配はしてないけど、それとこれとは話が別! 今でさえお兄ちゃんの隣を取られて怒り心頭なのに、これ以上になったら暴れるぞ私は。


「……真澄はさ。海行くのは久しぶりなの?」


 後ろを気にしていたら、隣に座っている弘樹君が声をかけてくる。「三回くらいかな……?」と、思い出した限りの回数を告げる。


 そういえば、この人のことはよくわからないな。だからこそ興味はあるし、初めて出来た男友達ってことで、嫌いではない。名前を呼ばれた時は正直驚いたけど、悪い気はしなかった。名前で呼ぶのは、それだけ関わりがあるってことの証だから。弘樹君が、それだけ私と関わろうとしてくれてる証拠でもあるから。

 だから、海に行くのも誘ったし、一緒に遊びたいと思っている。けれど心配なのは、お兄ちゃんが弘樹君のことをたまに睨んでることなんだよね。なんでかな?


 ……まあ考えててもわからないし、いずれ気づくような予感もするし。海でなにしようかな~……ついたらお兄ちゃんと一緒に考えよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る