女つれて帰ってきた

 お兄ちゃんが、由美ちゃんと鈴木さんと一緒にお茶に行くと言うから、今日は寂しく一人で過ごすのか……と夏休みの課題を片付けていた時だった。

 ガチャリの玄関が開く音がした。お兄ちゃんが早く帰って来たのだと思って、片付けを全て投げ捨てて玄関に向かった。


「お兄ちゃんお帰……り」

「こ……こんにちわ」


 玄関には最愛の兄とは別に、私がもっとも警戒している女性、由美ちゃんがいた。


「……なんでお兄ちゃんと一緒に帰ってきたのかな?」

「えっと……それは」


 言いにくいことなのか、しどろもどろとしている由美ちゃんに、助け船と言わんばかりにお兄ちゃんが「真澄に会いたかったんだって」と言ってくれる。


 私に会いたかった……?


「えっ? なんで?」


 お兄ちゃんと一緒にいるのに、私に会いたくなる理由がわからなかった。私だった他のことなど全て置いていき、二人だけの時間を楽しみたい。

 というか……鈴木さんは?


「お兄ちゃん。鈴木さんは?」

「風邪だってよ。だから由美さんの二人きりになってな」


 あの魚野郎、謀をしたな?

 だとすればさっきまで由美ちゃんはお兄ちゃんと二人きりの、至福の時間を過ごしていたというのか。羨ましい!


「一先ず、上がってください」

「ありがとう、綴くん」


 えっ? 上げるの?

 こちらの気も知らずに、お兄ちゃんは由美ちゃんを家に上げる。由美ちゃんも遠慮がちだが、靴を脱いでお兄ちゃんの後を着いていった。


 ……な~んか、嫌な予感がする。

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