女つれて帰ってきた
お兄ちゃんが、由美ちゃんと鈴木さんと一緒にお茶に行くと言うから、今日は寂しく一人で過ごすのか……と夏休みの課題を片付けていた時だった。
ガチャリの玄関が開く音がした。お兄ちゃんが早く帰って来たのだと思って、片付けを全て投げ捨てて玄関に向かった。
「お兄ちゃんお帰……り」
「こ……こんにちわ」
玄関には最愛の兄とは別に、私がもっとも警戒している女性、由美ちゃんがいた。
「……なんでお兄ちゃんと一緒に帰ってきたのかな?」
「えっと……それは」
言いにくいことなのか、しどろもどろとしている由美ちゃんに、助け船と言わんばかりにお兄ちゃんが「真澄に会いたかったんだって」と言ってくれる。
私に会いたかった……?
「えっ? なんで?」
お兄ちゃんと一緒にいるのに、私に会いたくなる理由がわからなかった。私だった他のことなど全て置いていき、二人だけの時間を楽しみたい。
というか……鈴木さんは?
「お兄ちゃん。鈴木さんは?」
「風邪だってよ。だから由美さんの二人きりになってな」
あの魚野郎、謀をしたな?
だとすればさっきまで由美ちゃんはお兄ちゃんと二人きりの、至福の時間を過ごしていたというのか。羨ましい!
「一先ず、上がってください」
「ありがとう、綴くん」
えっ? 上げるの?
こちらの気も知らずに、お兄ちゃんは由美ちゃんを家に上げる。由美ちゃんも遠慮がちだが、靴を脱いでお兄ちゃんの後を着いていった。
……な~んか、嫌な予感がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます