料理は愛情
「それじゃあ作り始めよっか!」
「おー」
家の台所にお招きして、いざ調理開始。普段は気の抜けたような子だと思ってたけど、綴君のことになると目に生気が籠っているように思う。本当に好きなんだな~。
「じゃあまずは簡単なところから」
手始めということで、簡単にチョコを溶かして型に流して再度固めるという、初心者でも出来る超簡単なものを作ることに。
「これすぐできるの?」
「うん。割りと固まるのは早いんだ~」
手順もばっちりで、オーブンも使ってないし爆発する要素もないから、たぶん行けるはず。
~数十分後~
「でき――」
開けて出てきたのは、なぜか型に作ったチョコじゃなくて、精巧に作られたチョコ細工だった。
「なんで!?」
「割りと上手くいったね」
「上手くいきすぎだよ! どうやったら♡型が鷹みたいなものになっちゃうの!? すでに錬金術だよ!?」
「それは言い過ぎだよ~」
嘘。これ私が可笑しいのかな? でも最初の一回だし……もしかしたら真澄ちゃんがそういう型を使ったのかもしれないし。
「一先ず食べてみましょうか…」
食べるのが勿体ないようなものだけど、最終的には食べないと意味がないので食べてみる。しかし。
「ごふっ!」
何故か吹いた。
なんだこれ? とにかく不味い! 不味いという感想がでないくらい不味い!? なんで!? 使ったのは同じチョコでチョコ以外何も使ってないのに、本当に何か生成してるの!?
「やっぱり…美味しくないよね」
シュンと肩を縮める真澄ちゃん。
「まだ諦めるのは早いよ! もっかいやってみよう!」
大丈夫。今度もちゃんと見て、1~10まで一緒にやれば何とかなるはず!
~数十分後~
「だからなんでそうなるの!? 今度は龍だよ!」
本当に錬金術だよこれ!
「いや、まだ大丈夫。形何て些細なものだよ、味さえよければ……ごはっ!」
不味い! 絶望的に不味い! すでにこの世のものとは思えないほどの不味さを誇っている! 同じチョコなのに!
変な話だけど、もしかしなくても真澄ちゃんは、お菓子が作れない体質なの!?
だとすれば納得……できる訳ないけど納得しないといけない気がするので納得するけど! でもそうなると……。
真澄ちゃんが悲しそうな顔(表情変わってないけど)をしている、ように見える。
駄目だよ私。私が挫けちゃ、真澄ちゃんが可哀そうだよ。
それによく言うじゃん。料理は愛情。愛さえあれば味なんて超えていけるんだよ!
「やろう真澄ちゃん。私が最後まで付き合ってあげるから!」
「……うん!」
結局、真澄ちゃんのチョコを作るのに時間を使って、自分のを作ることができませんでした。
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