手を繋ぐことすらできるのか?

 公園についてぶらぶら歩く。

 子供連れで遊んでいる夫婦。友人同士で騒ぐ人達。それを見たりしてゆったり過ごしているカップル。公園にいる人たちはそれぞれだった。

 私たちは……公園を散歩しているカップルくらいに見られるのかな? だとしたら嬉しいな。


 隣を歩く綴君を見つめる。今思うと、デートよりも先に色々やっちゃってたよね。お泊りとか添い寝とか……思い出すと恥ずかしいな。


「結構、人居るね」

「うん。休みだし、家族連れが多いね」

「みたいだね」


 子供と一緒になって遊ぶ親を見ると、微笑ましく思える。そういえば、私もああいう時期があったな~。


「なんだか懐かしいな」

「由美さんも、昔はああして遊んだの?」

「うん。お兄ちゃんとお父さんについてって、一緒にキャッチボールとかしてたんだ。今思うと、結構おてんばだったかも」

「キャッチボールか……」

「綴君は? そういうのしたことあるの?」


 私の質問に、綴君は視線を逸らした。


「ないかな。父親は、俺が小さい時から海外にいたから……」

「そう……だったんだ」


 聞いてはいけないことを聞いた気がした。そういえば、綴君たちって、あの家で二人で暮らしてるんだよね。お父さんもお母さんもいない、あの家で。

 家族仲って、もしかして悪いのかな。だとしたら、あまり訊かないほうがいいかも。


「由美さん」

「ん? どうかした?」

「別に気にしなくていいからね? 父親のことを隠してるつもりはないし。たまには日本に帰って来るから」


 私が気まずそうにしてるのがバレテしまったのだろう。優しくされてしまったことに、余計な気まずさを感じた。


「ごめんね。私、余計なこと」

「余計じゃないよ。それに、別にとりわけ不幸だったって訳でもないからさ。真澄だっていたし、今は鈴木や由美さんだっている。昔がどうとかは、もう関係ないよ」

「……うん」

「少し座る? 歩きっぱなしで疲れたでしょ?」

「そうだね。そうしよっか」


 笑顔を見せるその心の内では、綴君の過去のことが気がかりになっていた。

 私は彼の過去を知らない。というよりも、知っていることが少なすぎる。こんなにも好きなのに、私はこの人が好きな食べ物も、趣味も、聞き及んだ情報でしか知らない。彼の口から、本当を聞いてはいない。


 ベンチに座って、楽しそうに遊ぶ家族を見る。本当に幸せそうで、その光景が輝いて見えた。だけれど綴君には、あの景色がどう見えているんだろう?


 ……知りたい、綴君のことが。でもそれは……おこがましいことなのかな?

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