何があったの?

 びしょびしょの真澄は、まさに濡れ美人と言えそうな憂いを帯びた雰囲気だったが、他の人ならいざ知らず、兄である俺は心配しか感じなかった。

「お前、傘は?」

「傘? さしたよ?」

 いや、さしたらそんなびしょびしょにならないでしょ?

「ちゃんとこうやって~」

 真澄は傘を持つ仕草をして見せる。そして気付いた。

 今日は風が強い。恐らく横殴りの雨になっていただろう。普通なら傘をさす時は濡れないように雨から凌ぐようにするのが基本だが。真澄は今真上にさしているように見える。

 つまりはそういうことだ。

「そしたらめっちゃ雨に打たれた」

「だろうな。取りあえず風呂入ってこい」

「ほ~い」

 しかたがないと重い体を起こし、エアコンを起動させる。真澄が歩いてきたところは水滴が落ちているので、拭くために雑巾を用意する必要がある。

 だがまあ、洗面所は今真澄が……。

「真澄。脱ぎ散らかしながら行くんじゃない」

 点々と落ちている真澄の服。ぐっしょりと濡れているため水たまりが出来ている。

「ふえ?」

 いままさにシャツを脱ぎ捨てた真澄。さすがにこれは怒った。

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