祝100話記念の兄妹

「お兄ちゃん100回記念です」


 茹だるような暑さ、夏休みも半といったとき、唐突に真澄がそう言った。


 ……100回ってなんだ?


 ソファに身を投げてだらけていた俺は、上体を起こしてソファの脇に立つ真澄を見上げる。


「……なんかのゲームか?」

「100回です」

「……」


 いや100回ってなんだよ?


 真澄の思考回路が読めない。こいつが突然変なこと言うのは今に始まったことじゃないけど、今回も訳がわからない。


 100回? 何の100回? 100……100……。


「スカイダイブ!」


 鳥が飛んだ……ってあぶねぇ!!


 真澄がジャンプして飛び込んで来たのでソファから滑り落ちる。さっきまで俺がいたところに、バフッ! という音をさせて真澄が落ちてきた。


「殺す気かお前?」

「受け止める優しさがほしかった」

「そんな優しさをしたら俺は天に召されるぞ」

「ついに神になるのか」

「それもいいかもな」


 いのままに世界を操るとか……いや、がらじゃない。


「お兄~ちゃ~ん」


 真澄も滑り落ちてきて俺の上に覆い被さる。


「重い……」

「……ぐぅ」

「おい寝るな」

「お休み」


 あっという間に寝やがった。というか、重いし暑い……。

 結局、100回ってなんだったんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る