続・おバカな妹return´last

「お兄ちゃんは社会人だよね?」

 テレビゲームをしている俺の妹、佐藤真澄から唐突にそう尋ねられた。

 俺は作り途中のカレーから顔を上げ、真澄を見る。

「……」

 真澄は一区切りついたのだろう、画面から視線を外し、俺を見る。

「……お兄ちゃんは社会人だよね?」

「……大学生だけど」

 その返答に、真澄は無言。

 俺はカレーを作る作業に戻る。

「……お兄ちゃんは社会人だよね?」

「……大学生だけど」

 二度目の質問に、俺は同じように答える。また無言。

 ちらりと真澄を見ると、何かを考えるように俯いている。

「……お兄ちゃんは」

「大学生だけど」

 質問にかぶせて言った。予期していなかったのか、真澄は口を開けて固まった。

 俺は隠し味のチョコを入れて、リビングに戻る。

「……社会人じゃないの?」

「……大学生だけど」

 何を求めているのかまるで分からない質問に、同じように答える。訳を聞くのが面倒であるのもあるが。

「……お金持ってないの?」

「お前よりは確実に持ってるよ」

 その一言で、こいつが何を欲しているのか察した。

「真澄」

「何お兄ちゃん?」

「いい加減諦めろ」

「…………そうする」

 その日以来、真澄が俺に金が欲しいと言わなくなった。

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