心配する兄

 学校から帰ってきてから、真澄に様子がおかしい。


 いつもだったらお兄ちゃ~んと抱きつきに来るのだが、今日はそれもなく出迎えだけだった。

 そういうときは基本、真澄の私生活になんかしらの変化が起こったのが原因だ。

 最近はなかったんだけどな。また何かあったのか?

 そういえば昔、俺が小学卒業する少し前か。その時も今日みたいに、真澄の様子がおかしかった。思えばあれが初めてだったな。

 真澄は表情は変わらないけど、雰囲気や態度が表情よりも騒がしい。とはいえ、一緒に暮らしてる俺でもわからない時の方が多いけれどな。


 なので察することがほとんどできない。知り得る方法は、普段とは少し違うことをしているかそうでないか。それだけなのだ。


「真澄。何かあったのか?」


 ソファに寝転がりながらニュース番組を見ている真澄に訪ねると、「ん~」とから返事だけ返した。


 何かあったのかは明白。けれど真澄は何も言わない。

 問い詰めることは簡単だし、それをすれば真澄はちゃんと話すと思う。けれどもこいつが何も言わないということは、今はまだ俺を頼るほどのことではないということだ。


 それとも、まだ自分の中で問題が整理できてないのか。どっちにしても、俺の出る幕ではないようだ。

 それでも心配は心配だ。だって俺は、あいつの兄貴なんだから。


「何かあれば、力になるからな」

「……うん」


 さっきとは違い、しっかりとした返事だった。

 今はこれでいい。けれど、これからは少し、真澄の様子には注意しておこう。

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