第28話 森のダンジョン 1F


「さてと、準備もできたし、行こうか!」


「えぇ、でも私も行っていいの?」


「あぁ、一緒にレベル上げしよう! 早く行きたいんだよな! 楽しみ~」


「何かいいことでもあったの?」


「うん、実はさ、霞さんから加護をもらえたんだよ!」


「えと、霞さんというのは神さまのことだよね? たしか、ソウのッ昔の知り合いだったって……」


「あぁ、そうなんだ! 精霊魔法はエルフじゃないと使えないってのは仕方がないってことで、風魔法ってのをもらったんだよ!」


 俺のステータスには、”世界樹の加護”が追加され、新たに風魔法が使えるようになったのだ!


「加護をもらうって言ってたのはこういうことだったのね。ところで神さまと知り合いって、ソウって実はかなりの歳だったりするの?」


「んー、ここに来てどれくら経ったかはわからないんだけど、35はいってないくらいかな?」


「35! うそっ。もっと若いと思ってたのに」


「あぁ、ヒールの効果があって肌が若返ってるんだよ。多分……」


「多分ね……。もうソウって人がよくわからなくなってきちゃったわ」


「ま、深く考えるなって。よし、もう出発しよう!」


「えぇ」


 俺はミーナを連れ、ヴァンパイアの潜む洞窟へと向かうのだった。




 ここがヴァンパイアの潜むダンジョンか。


 入り口の周りは鬱蒼とした森の中に忽然と現れた。


 見た目は大型の洞窟になっており、中は暗くてよく視えない。


「うぅむ、いかにも大物が住んでますって感じだな」


「えぇ、人間の冒険者が数多く挑んでいる有名なダンジョンみたい。今も中に人がいるかもしれないわね」


「その挑んでいる人たちが犠牲となって大物が召喚されるエネルギーになってるわけか。よくできてるなぁ」


「時おり出現するレアアイテムが魅力なのよ。死んだらどうにもならないのにね」


 二人でダンジョンに足を踏み入れた。


 数分もしないうちに洞窟だった外観は石畳が敷き詰められた様子へ変化した。壁や天井も隙間なく積み上げられた石造りとなっている。


 そして、数メートルごとに明かりが用意され、ダンジョンを薄明るく照らしている。


「よし、じゃあ打ち合わせ通り頼むよ!」


「えぇ、行きましょう!」


 打ち合わせとは攻撃の順番のことだ。俺の風魔法はレベルが1な為、敵にほとんどダメージを与えることができない。


 そこで、俺が風魔法を片っ端から当てて、ミーナが精霊魔法で止めを刺していく。それだけだが、一人でやるよりも効率がいいんだよな。


 俺たちは走りっぱなしで突き進んでいく。出る敵はせいぜいゴブリンやオーク程度のものだ。


 どいつもミーナの魔法で一発で倒していける。


「当てるのが上手くなったね!」


「ありがとう。発動する早さが上がってるのよ!」


 俺たちはほぼ立ち止まることなく、ダンジョン1Fの最奥まで到着した。


 広いフロアーが俺たちを出迎えてくれたが、出てきた敵は何度かみたあのオオコウモリだった。


 俺たちはそのまま走り抜けつつ魔法を当て、敵の絶叫を聞きながら下のフロアーへ移動するのであった。


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