第42話 誕生! 大魔神ソウ
「ほぅ、たった一人で攻めてきたというのか」
その男の上背は高く、五メルはある。跨がる軍馬がまた突然変異で生まれたかのような巨大な軍馬であった。
金色の兜を被り、鎧も全て金色、そして、手に持つ三つ叉の槍も金色に染まっていた。
「へっ、やっと大将のお出ましか。待ちくたびれたぜ」
「なかなかやるようだが……、雑兵を相手に粋がるガキではないか」
「なんだと!?」
「おい、キリ、ショウ。お前等が相手をしてやれ」
「「はっ」」
飛び出してきたのはオーガが二人。だが肌の色が一人は赤く、もう一人は青い。
「こやつらはただのオーガではない。暗黒の神、サタン様の寵愛を受け、種族進化したハイオーガの兄弟よ。貴様如きには過ぎたる相手よ」
「舐めやがって……」
若者を挟むようにハイオーガの二人は位置どった。
「随分と派手に暴れたようだが、ここまでだ」
「我ら兄弟を雑魚共と一緒にしてくれるなよ」
ハイオーガ達は闘気を解放した。それは強者にはすぐにわかるほど強烈なものだった。
「へぇ、なかなかだな。あんたら。だが、俺の神様はもっとすげぇぜ。全く底が見えねぇほどな!」
ハイオーガ達は同時に動き始めた。若者に近づき、そして、攻撃するのも同時だった。
赤オーガからパンチが上段に繰り出されると同時に後ろから青オーガは足下へ回し蹴りを放つ。
若者はそれをひょいと空中へジャンプして躱し、青オーガへ両足でキックをお見舞いする。
「ぐぉっ!」
青オーガはたまらず吹き飛んだ。
「む? どうした。なぜ起き上がらない?」
敵のボスがそう呟いたが、青オーガの顔はべっこりとヘコんでしまい、青オーガの体はヒクヒクと痙攣を繰り返すだけだった。
「この化け物がっ」
赤オーガはたまらずに逃げ出した。が、若者が追いかけるスピードのほうが圧倒的に速かった。
背中に正拳突きを見舞うと、赤オーガは数十メルも吹き飛んでしまうのだった。
「ほぅ、想像以上にやるようだな。仕方がない、俺が相手をしてやろう。
巨大な軍馬から降り立ったその体躯は筋肉の塊のようだった。
「ワシはエルガ。オーガ族の首長にして魔界六大将の一人よ。小僧、名はなんと申す?」
「俺は、ドウム! 我らが大魔神、ソウ様の一番弟子よ!」
「ふむ、皆の者は下がって居れ! 我が闘気に巻き込まれたくなくばな!」
兵達は二百メルも下がっていく。まるでこれから起こる災害から逃げるように。
「行くぞっ!」
「応っ!」
そして、二人の闘士が激突した。
*
もうどうにでもなれ!
俺は次々にお酌にくる村人たちにもてなされ、肉をつまみながら、ひたすら酒を飲まされ続けていた。
「くぅ、もうそろそろ限界が近いよ」
「あら? 旦那様。それでしたら妾の膝で寝てても良いのじゃぞ?」
レイは頬を赤らめてそんなことを言ってくる。
もじもじと恥ずかしながらそんなことを言ってくる様は確かに可愛いのだが、速すぎる展開に俺の頭もついていかないのだ。
そんな時はやけ酒に限るってことで、少し飛ばしすぎたようだ。
「う~、ちょっと用足してくるよ」
「いってらっしゃいませ。旦那様!」
すっかり目がハートマークになっているレイを置いて、俺は酔い覚ましに散歩することにしたのだ。
夜の冷えた空気が肌に当たるとサッパリするな。
辺りはシンとしており、虫の鳴き声が響いている。
「ん? なんだ? 力が今までにないくらい湧き上がってくる……、これは……?」
急いでステータスを開いた。
名前 ソウ
種族 大魔神、魔王を統べる者
レベル 9999
~~~~
んん???
俺、神になっちゃったの? ウソでしょ?
しかも、魔王を統べる、なんて! 俺は何もしてないだろ!
一体、何が起こってるんだ?
大魔神の箇所をクリックしてみると、説明がでる。なになに……、
(魔族の強い信仰を集める者が神格を得て、種族進化した者。信仰する者たちの気持ちが強ければ強いほど、強力な力が蓄えられ、それを意のままに操ることが出来る)
な、なんじゃこりゃ!!
一体どうなってるんだ?
この湧き上がる力は一体?
その時だった。
「うっ、だ、誰かが闘っているのか?」
俺の心に、ダメージを負った者の気持ちが伝わってきた。
「なんだと? 一人で六大将と闘っている?」
いかん、こんなことをしてる場合じゃない。急がなければ……。
自分の体にヒールとキュアーを重ね掛けし、俺はすぐさまその闘いの方へ向かうのであった。
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