第101話 聖神イクス戦 2
「ぐぬぅ! 小癪なマネを!」
イクスの目は怒りに血走り、力任せにまた聖剣をブン回してくる。だが、これこそこちらの思うツボだ。
ありったけの魔力で造ったホーリーソードを両手に構え、奴の剣と打ち合った。
ガギギギギィィィン!!!
俺のホーリーソードはリーダーの神聖魔法強化ポーションにより、イクスの聖剣と打ち合えるまでにバワーアップしていた。
だが、流石にイクスは体が大きいだけあって、その力は俺の力を上回っていた。打ち合う事は出来ても、鍔迫り合いでは少しずつ押されてきてしまう。
「ぐっ! 凄まじい力だ。バフをかけてるのに押されるとは!」
だが、ここまでイクスの攻撃を抑えられれば充分な時間稼ぎになっていた。
「フレアバレット!」
霞さんの合成魔法は凄まじい威力を誇っているだけでなく、詠唱時間の極端な短さと、本人の無尽蔵にも思えるMPの高さも相まって、連続で緻密な攻撃が可能となっている。
このフレアバレットという魔法だが、炎系極大魔法、フレアーを元に、風魔法で圧縮している。さらに、大砲のような砲身状に空気を形造り、凄まじい勢いで射出されるのだ。その威力は通常のフレアーなど問題にならないほどの威力になる。そこにリーダーの強化ポーションまで加わり、壮絶な火炎弾が連発で打ち込まれていった。
「むんっ!」
エルガは、魔力を集めながら腰を少し下げ、どっしりと構えると、その体がブレだした。そのブレはどんどん大きくなっていき、やがて二体のエルガに分裂した。
さの二体は俺の残像とは根本的に違っており、魔力で自分の体をもう一体造りだすというとんでもない代物だった。ゆえに、造りだしたもう一体も攻撃が可能となっていたのだ。
「ぬぅ〜、りゃりゃりゃりゃりゃ〜〜〜っ!」
エルガのただでさえ強力なパンチが、2倍の数になってイクスに襲いかかっていった。
霞さんとエルガの攻撃はイクスの胸に全て命中していき、イクスの体は爆発、炎上する。
「やったか?」
爆炎が晴れていくと、イクスは聖剣を手放し、地面に倒れ込んでいるのが見えた。
だが、イクスの指がまだピクリと動いた。
「危ないっ! みんな伏せろっ」
俺の声が発せられると同時に、イクスは瞬時に起き上がり、飛び跳ねて回し蹴りを放ってくる。
両手に出しっぱなしだったホーリーソードでかろうじて受け止めたが、蹴りの威力に俺は体ごと吹き飛ばされた。
イクスはあれ程の攻撃を受けてもまだ生きていた。
「ソウ! 大丈夫かい?」
リーダーが声をかけてくれるが、イクスはすぐにリーダーへ襲いかかる。
「ぐっ! こいつ、強いじゃないか!」
イクスは口を開かない。その目は細く鋭くギラつき、リーダーを睨んでいた。
リーダーの腹にイクスの前蹴りが決まるとその場から吹き飛ばされる。
イクスはすぐに霞へと狙いを定め、瞬時にジャンプからの回転回し蹴りを放つ。
だが、エルガが割って入り、その蹴りを腕に装備した
強烈な蹴りは大柄なエルガの巨体すら吹き飛ばした。
「くっ! ライトニングトルネード!」
霞の放つ魔法がイクスを貫いたかに見えたが、その姿は残像のように消え去り、イクスの本体は霞の後ろから突きを放った。
まともに直撃を受けた霞の体も数十メルも飛ばされ、地面に激突するのであった。
「貴様等は決して許さん! この世に肉片一つ残らず消し去ってくれるわ!」
イクスの震える声が辺りに響き渡る。
ハッキリと分かったことがある。イクスは鎧や武器がない方が強い。恐らくかなりの重量だったのだろう。その重りから解き放たれた今こそイクスの真価が発揮されているのに違いない。
「俺にやらせてくれ!」
皆は俺を見て頷いてくれた。今こそ、先の闘いで手に入れた力を解放する時だ。
その力とは 竜化。
体を文字通り、竜の体に変化させる術だ。消費MPが激しく、使っている間はどんどんMPが減っていく弱点がある。だが、その威力は……。
「行くぞ! 竜化!」
俺の体が、みるみる内に変化していく。体は黒くなっていき、鱗が現れた。爪は長く、固く、どんなものでも切り裂けそうなほどに鋭く伸びていく。身長も1.5倍ほどに伸びていき、腕や足の太さは2倍はありそうだ。
顔の途中まで鱗に覆われ竜人のように変化したところで変身が終わるのだった。
仲間たちも驚きの表情で俺を見ていた。
さ、早めに片付けないとな。今も凄い勢いでMPを消費している。
俺は駆け出した。また、イクスも俺に向かって走り出す。俺のパンチから放たれる闘気とイクスのパンチから放たれた闘気がぶつかり合い、空中で爆発が起きる。あまりに強大なエネルギーがぶつかり合う。稲妻が爆発から飛び散り、見る者を圧倒する。
俺の攻撃とイクスの攻撃は何度もぶつかり合い、あちこちで爆発がおこっていく。
俺の体の動きは音速を超え、移動する度に凄まじい爆発音を伴っていく。イクスも移動の度に音速を超えてきた。
俺の移動した後は光りの跡がが残り、また、イクスの移動した後にも光りが残り、その光の筋が幾度もぶつかっていく。
だが、スピードでは俺の方がやや上手だった。徐々に俺のパンチや、蹴り、そして爪による切り裂きがイクスの体を捕らえ、体のあちこちから黒い液体を流している。
もちろん俺も無傷ではない。イクスの攻撃は何度も喰らっており、その度に赤い血を吐き出し、体についた切り傷からも流れ落ちていく。
闘いはまさに最終局面を迎えようとしていたのだった。
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