第9話 ダンジョン4Fへ



 「うあ〜〜っ、疲れてきたな。もう」


 レベルはすでに8590まで上がっていた。


「うーん、これ以上ここでレベルアップするのは無理かなぁ」


 すでに千体を超えるエンシェントドラゴンゾンビを狩ってもレベルが上がらなくなっていたのだ。


 どれくらの月日をここで過ごしたのかなんて全くわからない。


「そろそろ先に進むしかないか」


 この場所にはかなり長いこといたから名残惜しさを感じてしまうな。だけど、ここまできたんだから俺はレベルカンストを目指したい!


 体感的に数年位はお世話になっただろうし、惜しい気がするが、ここを離れ、さらにダンジョンの奥にある下り階段へと足を踏み入れた。


「さて、ここからは慎重にいくか」


 自分の手のひらにホーリーソードを意識した。刀身が白く伸び、俺の身長よりもずっと長く伸びていく。


 ホーリーソードは今や、ナイフを持つ必要もなくなっていた。


 以前は衝撃波を打つと消えてしまっていたが、今となってはずっと手に持ったまま、いくらでも衝撃波を打ち続けることもできる。


 レベルアップの効果のせいか、今や魔法を唱えることをしなくても意識だけで発動するようになっているし、それぞれの魔法の威力や射程などもアップしていた。


 今も、現れた敵を一瞬にして切り裂き、敵は俺に出会ったことすら認識できていない印象を受ける。


 この辺りに出る敵はスケルトンナイトが馬の骨に乗っており、長い槍と大きな盾を持っていた。メイジスケルトンは持っている杖が金色に光っており、先端が三叉に分かれた豪勢なものになっていた。


 それでも今の俺にとっては雑魚でしかない。素早く敵の死角へ移動し、ホーリーソードで切るだけの単純作業だ。


 少し広めのフロアーにでた。


 遥か前方には馬の骨に跨ったスケルトンナイトが一直線に並んでおり、その後方にメイジスケルトンが並んでいるのが見える。


 陣形を使って攻撃してくるのか。面白い!


 すぐさま色とりどりの様々な魔法が飛んでくる。


 念の為、バリヤーを張りつつ、移動で躱していく。今の俺の素早さは99999となっており、これ以上あがることがないところまできている。


 結局バリヤーにすら一発も掠らずに全ての魔法を避けきったところで、スケルトンナイト達が一斉に突っ込んできた。


「一体ずつ相手にするのは面倒だ」


 地面に向かってホーリーソードで切り裂く。


 すると地面に深さ数十メートルはあろうかという地割れが一帯に発生し、スケルトンナイト達を飲み込んでしまった。


「よしっ! 次はメイジスケルトンだ」


 横一直線に並ぶメイジスケルトン達のすぐ前に残像を残し、俺自身は岩陰に身を潜めた。


 メイジスケルトン達の一斉魔法が始まる。


 凄まじい爆風が俺の隠れている岩に当たる。辺りは煙で全く見通せなくなってしまった。だが、これで俺の狙い通りになりそうだ。


 「よし、これで奴らから俺の姿は見えないだろう」


 勢いよく飛び出し、数体ずつホーリーソードで切り裂いていく。


 俺の周りだけはバリヤーのおかげで視界は良好なのだ。しかも奴らは一直線に並んでいたおかげで狙いやすい。


 数瞬もすれば数十体はいたメイジスケルトン達も片付いてしまった。


 あまりにもあっけなさすぎる決着にため息がでる。


「うーん、ここでレベル上げするのは難しそうだな。さっきのドラゴンのほうがまだマシってもんだ。先に進むとするか」


 経験値がマズイ所はさっさと次に進むに限る。


 このフロアーから下の階段へ行くと、次はすぐに大きなフロアーに繋がっていた。


「ここは……?」


 何もない石畳だけで作られた殺風景なフロアーだな。広さは先程の部屋と大差ない。サッカーグラウンド二つ分といったところか。


 バリヤーを張りつつ、ゆっくり歩いて様子を伺っていく。


 ある地点まで歩いたとき、俺の周囲に突然アンデッド達が起き上がってきた。


「ん? 今まで何もなかったのにいきなり現れるのか! まぁいい。エリアヒール!」


 起き上がったばかりのアンデッド達はすぐに崩れ落ちる。


「ん? 倒せなかった奴がいるのか……」


 目の前に立ちはだかるアンデッドは他のメイジスケルトンよりもはるかに大きく、見上げるほどの大きさだ。十メートル以上はゆうにある。巨大な黄金に光る杖を持ち、マントは漆黒で、頭には王冠が光っていた。


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