第4話 そしてダンジョンへ
「うーん、一体どうなってる? どうかんがえても神殿なんて作りじゃないな」
俺は迷宮のように入り組んだ道を右手法というやり方で進んでいた。
ダンジョンで迷わないようにずっと右に進んでいくという単純な進み方だ。効率は悪いだろうが、迷うことがないっていうのが大事なんだよね。
この遺跡は、分かれ道に次ぐ分かれ道があり、ゴブリンやコボルドのようなモンスターもそこかしこを歩いていた。
「これは間違いなく、ダンジョンって奴なんだろうな」
神殿がこんなに複雑な作りになっているはずもないし、ピラミッドだって隠し通路はあるが真っ直ぐな道が多かったはずだ。
何より、日本で遊んだRPGのダンジョンそのものという感じなのだ。
「うぅむ、攻略しろってことなのだろうか?」
俺は異世界神のメールの最後の部分を思い出した。
確か……、
「では、ゆっくりとこの異世界を楽しんでくれることを願っているよ」
って書いてあったよな。……って俺の思ってる美少女とイチャイチャしながら、無双しまくって、豪邸買ってスローライフに入るっていう俺の願望じゃなくて、”遺跡ダンジョンの探検をゆっくり攻略して楽しめ”ってこと? うそ……だろ……?
「くそ……、なんてこった! 異世界神にはめられた!」
悔しさに拳を握る手に力が入る。ついでに頬にも涙が流れ落ちる。
「や、やってやろうじゃないかっ! これでもRPGは得意だったんだ! 一時期、ネトゲ廃人もやったことがある俺をなめるなよっ!」
静かに闘志が燃えてくると、ナイフをキツく握りしめていた。
「ん? あっ、ナイフが変形しちゃった!」
元々、ボロいナイフだったのだ。力を入れて握ってしまったせいか、持ち手の所が指の形にヘコんだのだ。
「あ……、まぁ、なんだか持ちやすくなったし、これでいいか。エルゴデザインってやつだな。うん」
そういえば、神聖魔法ってのに、武器を強化したり、治したりする魔法はないのかな?
思い立ったら試さずにはいられない。すぐに魔法を唱えてみる。
「リペアー」
持っていたナイフの刀身が光り輝くと、ナイフはまるで新品のように輝き出した。
「やった。成功だ!」
持ち手の所のヘコみはそのままになるよう、意識したせいか、持ち手だけは俺の手の形のままだ。
念の為、刀身にキュアーをかけてから、俺の腕を切ってみる。
「うおっ!? なんだこれ? スッと切れていく!」
皮一枚を切るつもりが、肉までスパッと刃が入ってしまったのだ。全く力は込めてないのに。
「い、いかん。痛いぞっ。ヒールだ。ヒール、ヒール!」
ヒールを唱えすぎたせいか、俺の全身を白く輝く光が包み込んだ。
「……これは? 明らかに腕のシワが少なくなった気がする」
顔もペタペタと触ってみると、シワが幾分減った上に髭も薄く感じる。
自分の体をあれこれ調べていくとズボンが緩くなっていることに気付いた。
「あれ? ピッタリだったはずなのに……」
お腹を見るとたるんでいた下腹がなくなっており、体がスリムになっていたのだ。
「肥満までヒールで治るのか?! いや、肥満というより、体全体が若返っているような気がするぞ?」
ベルトの穴を一つずらし、腕を廻してみても軽さが以前とは全く違っていた。
以前は腕を回そうとするとポキポキと音がなり、十回も回せば肩が痛くなったのだが、今は違う。軽々と腕は回り、音も鳴らないのだ。
「こりゃいいや」
俺はすっかり気分をよくして探索を進めるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます