第5話 ダンジョン2F



 レベルアップした俺は圧倒的に強くなっており、すでにゴブリンは敵ではなくなっていた。


 今もゴブリンが三匹固まって歩いていた所を急襲し、瞬く間に片付けたのだ。


 すでにダンジョンに潜って数時間は経過しているはずなのだが、ヒールとキュアーを使えば、眠気もスッキリするためずっと籠もりっぱなしだ。おかげでゴブリンとコボルドを合わせて五十匹以上をすでに倒している。


「体は軽いし、力も強くなったおかげで、ゴブリンの首を一発で切って仕留められるようになったな。おっと、またレベルアップだ」


 体にさらに力が籠もり、体が軽くなる。


 これでさらに強くなったな。なんだか楽しくなってきたぞ。


 俺は基本的に凝り性だった性格もあり、ダンジョンは隅から隅まで調べ尽くすつもりだった。


 完全攻略するまでこのダンジョンから出るつもりはない。思いっきり強くなって美少女チーレムスローライフを目指すんだ、俺は。


 すると目の前には階段が現れた。


「ついに地下2Fか……。どんな敵が待っていることやら」


 気合を入れ直し、階段を降りていく。


 その先にいきなりモンスターが待ち構えていた。


 白い骨がくっついた体に、頭蓋骨の目の窪みが怪しく赤く光っている。しかも長い剣と大きな盾を持っており、見た目にも強そうなスケルトンだった。


「うおっ、危ねぇっ! 階段降りたらいきなり剣が降ってくるなんて……、さすがリアルなダンジョンは違うな」


 素早さが上がっていたおかげで剣を躱すのは容易かった。が、俺の攻撃も大きな盾で防がれてしまう。


 こちらは刀身の短いナイフのため、剣と打ち合うことはできない。スケルトンに攻撃させ、躱してからナイフを突き出すのだが、ことごとく盾で防がれた。


「こりゃまずいな。攻撃する方法をなんとかしなきゃ、ここから先に進めないぞ」


 俺はまた剣を躱すと、ナイフではなく手を突き出し、ヒールを唱えた。


「くらえっ、ヒール」


 アンデッドに回復魔法が聞くのはRPGのお約束だ。


 触れてはいないのに、スケルトンは急に骨が崩れ落ち、ゴブリンと同様、砂のようになって消えていった。不思議なことに持っていたはずの剣や盾も一緒に消えていく。


「ふぅ、スケルトンか。まともに戦えば勝てたかどうか。強敵だったな」


 一息ついて、さらに進んでいく。


 先程はスケルトンに触れることなく倒すことができたが、ヒールの射程距離が気になったんだよな。あと、さらに広範囲につかうことはできないだろうか? 課題は残っている。しかし、時間も無制限だ。ゆっくりいこう。


 スケルトンを探していると、奥からガシャリ、ガシャリと金属が擦れるような音が聞こえてきた。


 岩陰に身を隠し、覗いてみると、今度は鎧をきたスケルトンと先ほども見かけたスケルトンが五匹歩いてくる。


「うまく発動すればいいんだけど試してみるか……。エリアヒール!」


 ここからスケルトンたちまでは二十メートルは離れている。これで効けばもうスケルトンは狩りまくれるはずだ。


 思ったとおりにスケルトンたちはあっけなく崩れ落ちていく。


「やった。これは楽に戦える!」


 それからは走ってスケルトンを探してはエリアヒールを唱えまくった。途中にゴーストやらゾンビのたぐいもいたが、関係なくエリアヒールの餌食となっていった。


 エリアヒールはどうやら半径十メートル前後がやっとのようだった。正確に測ったわけではないし、測れもしないのでおよそだが、目で見て射程に入っていればそれでよかった。


 通常のヒールでも五メートル位なら届いた。これなら、スケルトンの攻撃範囲の外からヒールを唱えるだけで片がつく。


 ヒールは唱えてからすぐに効果が現れるが、エリアヒールは唱えてから、俺を中心に効果が広がっていくようで、届くまでにタイムラグがあった。それでも十メートル離れている敵にニ秒くらいで届くので気にはならない。


 ひたすらに走りまくって、アンデッドを見つけてはエリアヒールを繰り返していく。


 その先で目に入った光景は驚くべきものだった。


 なんと、モンスターが現れる場所があったのだ。


 薄暗いダンジョンの一角に黒いモヤが現れ、そのモヤが大きくなるとスケルトンが登場するのだ。


「ヒールっ!」


 あっけなく崩れ去るスケルトン。しかし、このモンスターが湧き出る場所はそのままだ。十秒程度でまた黒いモヤが発生する。


「ヒール」


 出てきた瞬間に崩れ去るスケルトン。もはやただの作業である。


 十秒に一回、ヒールを唱えるだけで経験値が貯まるってわけだ。


「こりゃたまらんな! お? また出てきたぞ。ヒール!」


 よし、このままずっと続けてレベルアップしていくぞ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る