第189話 二回戦第三試合 ガンダーウルフ代表 バッジ VS 天使族代表 ルシフェル



「東の方角ッ! ガンダーウルフ代表! バッジッ!」


 花道に大きな樽を背負ったドワーフが一人、入場する。


「さぁ、この男、いったいいくつの武器を持ってこのトーナメントに参加してきたのか? 一回戦ではあの真祖のヴァンパイア、キュイジーヌを破って二回戦へ進出してきました! その時も多数の武器を失ったはずですが……、見てくださいッ! 彼の背負っている樽の中はまたしても武器で埋め尽くされていますッ!!!」


「この辺りはさすがバッジとしかいいようがないですねぇ。そのどれもが聖剣クラスのものですから切れ味や耐久性も抜群なわけです。あれほどに武具を持ち込んでいるのは彼だけだと断言できますね」


「さぁ、この二回戦では……、一回戦でも活躍しました、あの大盾と、なんと、槍を持っていますね!」


「なるほど……、二回戦の相手は我らがルシフェル先輩。ルシフェル先輩の武器は恐ろしく長い神剣ですから、それに合わせて少し短めの槍を選んだんでしょうね。あの長さだと、確かにルシフェル先輩の間合いの外から攻撃が可能なことでしょう!」


「それにしても見事な槍ですねぇ……、はぁ〜〜〜っ」


「えぇ、それはもう……、って! もしかして……」


「ん? なんですか?」


「いえ……、バッジの持っている槍なんですが……あのロンギヌスに似てる気がしたんですよ」


「えっ? あの聖槍ロンギヌスですか? 神を討ったと云われる神殺しの聖槍ロンギヌスですよね?」


「えぇ、私は聖槍ロンギヌスを見たことがあるんですが、槍先の形状が似てるんですよね……」


「まさか……本物じゃないですよね?」


 そんな解説者のやり取りを聞いていたのか、バッジが声高に叫んだ。


「言っとくがなぁッ!!! ロンギヌスもワシが造った槍なんじゃぞ! この槍はロンギヌスの元になった槍、名槍”ロン”じゃ! 相手は最上級の天使、神に近い存在。ならばこそ、この槍の出番、というわけじゃ! ガーーーハッハッハッハ!!!」


「おおおッ! なんとそうでしたか! 聖槍ロンギヌスの原型となった槍、ロンを携えての登場ッ! まさか、伝説の元になった槍が存在しているとは思いもよりませんでしたッ!」


「見れば見るほど素晴らしい槍ですねぇ! これは戦いにも期待できそうですッ!」」


 バッジは槍を絶賛されたせいか、高笑いしながら舞台へと上がっていった。




「西の方角ッ! 天使族代表ッ! ルシフェルッ!!!」


 西の花道が一気に興奮のるつぼに包まれる。


「さぁ、我らが天使族のルシフェルの登場ですっ!」


「あの一回戦で打ち破ったマリーンの弓も背中に背負ってますね! 一回戦で見せた、神剣をあの魔導弓で攻撃するのは、凄まじい威力を誇っていました。今回もルシフェル先輩の絶技が見れるかもしれません! 期待しましょうッ!」


「それにしても凄まじい歓声ッ! 天使たちが地を踏みしめる音が響き、地面が揺れてますッ!」


「やはり、この大会での一番人気ですねぇ! 会場中がルシフェル先輩の応援ですから……、バッジにはやりずらいかもしれませんね」


 ルシフェルは緊張した様子もなく、舞台へとあがっていく。


「さぁ、二人が舞台インしましたッ! いよいよ、本日、二回戦第三試合が始まろうとしていますッッッ!!!」




「ガンダーウルフ代表! バッジ! VS 天使族代表! ルシフェル! レディ……………………、ゴーーーーーーーーーーーッッッ!!!」


 先に動いたのはバッジだった。あの大盾を構えたままルシフェルの所まで一気に詰め寄っていく。


「さぁ、仕掛けたのはバッジ。どうでるのか?」


「お? 上手いですよ。あの盾をしっかり構えながらルシフェル先輩の間合いの外から攻撃しています!」




 バッジは慎重だった。


 一回戦のこの天使野郎の戦い方……、まるで本気じゃなかった。敵は遠距離攻撃のプロみてぇな奴だったが……、果たしてこの槍の間合い。中距離ともいえる所ならどうだ?


 ルシフェルは長い剣を持ったまま、バッジの突き出す槍を、上半身だけの動き”スウェー”で悠々と躱し続ける。


「くっ……、当たらねぇッ!」


 なんてこった!? 俺の槍がかすりもしねぇとはな……。


 連続の突きや払いはまるで当たる気配がない。


「バッジの激しい攻撃ッ! だが、ルシフェルはそれを余裕で躱し続けていますッ!」


「バッジの槍裁きですが、当たりはしないものの、見事なものですよ! 多段突きなんて一息で五発、それに組み合わせるように薙ぎ払いや、槍を回転させての多段払いなんて、ハッキリ言って達人の領域です!」


「その達人の槍が当たらないーーーッ! ルシフェルには余裕の笑みすら浮かんでいるッ! 一体、ルシフェルの強さはどれほどのものなのかッ! 全く計り知れませんーーーーッ!」




「ククッ、なかなかやるようだ。だが……、その程度では足りん……、全く足りんのだッ!」


 ルシフェルがその剣を横に一閃した。


 おっとこいつを喰らうわけにはいかねぇ!


 バッジは大盾に力を入れて構えるのだった。


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