第52話 魔界統一編最終対決 魔神戦! 1
「まさか……、俺様が現界できるとはな。うん? 貴様は何者だ」
巨大な魔神はキツい視線で俺を睨み、尋ねてきた。
「俺はソウ。この世界にたまたま来てる所だ。て、アンタは?」
「俺様にモノを尋ねるなど千年早いわ。
フン、この世界を牛耳ろうと思念で操っていたが、すぐにくたばりやがって。
まぁいい。現界できたからには、俺様が直接手をくだしてやろう。
そこの貴様もすぐに俺様の目の前から消えれば見逃してやってもいいぞ? 今の俺様は気分がいいんだ。グワッハッハッハッハ!」
全く、今まで会った中で一番尊大な奴だ。だが……、それを言えるだけの力を持ってそうなんだよな。コイツ。
「あいにくだが、この世界のこと、気に入ってるんだ。壊すっていうんなら、俺が相手しなきゃならん。お前こそすぐに帰ってくれれば、見逃すぜ?」
魔神は驚きに眉を上げると、
「俺様を見逃すだと? 面白い冗談だ! ならば消えるがいい!」
魔神の指先が光る。真っ黒なレーザーが一瞬にして俺の体を貫く。が、その体はすぐに消え去り、俺は近くへ躱していた。
あっぶねぇ! 残像を残してなかったらやられるところだった!
「ほぅ? 今のを躱すか。この世界の生物風情にしてはよくやる。だがな、我ら神界に棲む大神と貴様等のような下等生物は格が違うのだ。せいぜい思い知るがいい!」
なんだか長いこと
魔神は指を光らせる度にレーザーを連発してきた。
俺の残像を通り抜けたレーザーは後方にある城を容赦なく破壊し、森の木々をなぎ倒す。
「いい加減にしやがれっ!」
魔神の頭部近くへジャンプし、ホーリーソードを振り下ろす。
だが、魔神はそれを軽く手で防いだ。
「ほぅ、まさか、下等生物がこれほどやるとはな。褒美にもう少し遊んでやろう」
くっ、まさか俺が遊ばれるなんて……。
魔神は腕を上げ、ただ振り下ろす。それだけの動きだが、黒い毛がどこまでも伸び、俺のいた場所を打ち付けた。
その攻撃は地割れを起こし、黒い溝が深くまで入り、底が見えない。
くっ、なんて奴だ。これでも本気じゃないなんて……。
「すばしっこい鼠だ。ふぅむ。これでどうだ?」
魔神は自分の周りに腕を幾度も振り下ろす。しかも最初の一撃より腕が太くなり、魔神の前はまるで底の見えない海溝のように、大地が消え去った。
俺は十体以上もの残像を残しつつ、なんとか躱した。
こんなに城を破壊し尽くしやがって……、レイや村長たちは大丈夫だったろうか?
しかし、いくら何でもこの地面では戦いにくい。
地面に向かってヒールを唱えると、地面が盛り上がり、元の大地に戻っていった。
「ほぅ? 面白い術だ。大地を創り出したのか? まぁ俺様には関係のないことよ」
魔神は容赦なく大地を打ち付ける。俺の残像を容赦なく捉えていき、攻撃は俺の本体に近づいてくる。
くっ、忙しいな。躱しながらヒールで地面を元に戻していかないと立つ場所すらなくなっちまう!
「ふぅむ、これでは埒があかぬか。しからば……」
魔神はついに武器を手に持った。
俺のホーリーソードと同じ、魔法の剣。だが、魔神の持つ剣は黒く妖しく光っていた。
「ぬうりゃぁ!」
魔神の一振りは半径数百メルもの長さとなって襲いかかってきた。
「こりゃマズい!」
躱そうかとも思ったが、万が一、その範囲にレイ達がいたら……、そう思うと躱すわけにはいかない。
ホーリーソードに魔力を込め、大きく太くして魔神の剣を受け止めた。
ギャリギャリギャリギャリ!!!
手に伝わるのは恐ろしいまでに強烈な振動。押さえている手もビリビリと揺らされる。剣がぶつかり合う所から暴風が巻き起こる。俺の顔に容赦ない風が吹き付けた。
キッツい!!! 顔の周りにバリヤーを張ったから今は呼吸できる。だけどマジで呼吸困難になるところだった!
「なんと、俺様の剣を受けるとは……。だが、出力不足のようだ」
魔神は俺の剣を押し切った。そのまま俺のいた場所を横に一閃。
凄まじいパワーだ。俺は辛うじて躱した。残像様々だ。
その容赦ない攻撃が続く。降り注ぐ。俺は少しでもその威力を下げなければならない。何度も打ち合う。だが、一度として俺が押し切ることは出来ない。
「どうした? そんなことでは俺様を切ることなど、不可能! 逃げてばかりいないで勝負したらどうだ?」
バカ言ってんじゃねぇ! まともに打ち合ったらその黒い剣であっという間に黒焦げじゃねぇか! そんな安い挑発、俺が乗るワケねぇだろ!
ただ、魔神も攻撃が通じないのを焦ってきたのだろう。口数が多くなっている。
「フンッ、このハエがっ。ちょこまかと動きおって。こざかしいわ!」
魔神の剣は激しさを増してくる。
どうやら俺が受け止めるのはもう無理そうだ。巻き込まれて死んじゃった人がいたらゴメン! 後で生き返らせるから少し待っててくれ!
俺は戦法を切り替えた。この強烈な攻撃も躱す。
思った通り、魔神の攻撃は遙か後方にまで衝撃が飛ぶ。数百メルも後方で爆発が起こる。震源地である、この辺りは強風が巻き起こる。常人では移動もままならないだろう。
だが、魔神の攻撃は決して洗練されているわけではない。
一撃、一撃が重いのだ。その重い攻撃の間に隙が生じる。
俺の狙いはそこしかない。
「いっけぇ!」
魔神が次の攻撃を出す瞬間、残像を残し、後ろへ回った。
そのままホーリーソードで頭からたたき切った!
手応えあり! やったか?
だが、魔神は真っ二つに割れた頭部を手で押さえた。
「この鼠がっ! もう許さん。許さんぞ!」
頭の周りを黒い霧が覆う。その一瞬で頭部はすっかり治ってしまった。
マジかよ。コイツ。回復魔法持ちか……。こりゃ長引くな……。
でも、俺はいつだってプラス思考。レベル上げ周回1万周より短いだろう! 多分! 大丈夫! 俺ならできる!
強引に自分を励まし、俺は地獄の攻撃周回へと突入していくのだった。
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