第53話 魔界統一編最終対決 魔神戦! 2
元魔王城から数キロメルほど離れた所にまでレイ達は逃げてきていた。
村長が使用したヒールとキュアーはソウ直伝。皆を回復させながらひたすら全力疾走で離れてきたのだ。
「もうここまで来れば大丈夫かのう?」
息切れをしながらレイが言う。
「うぅむ。しかし気になりますな。あの魔神とやら……。ソウ様の焦った顔なぞ初めて見ましたわい」
「妾もじゃ。だからこうして逃げてきたが……やはり気になる」
その時、レイ達がいるすぐそばにまで衝撃が飛んできた。
強烈な暴風が吹き荒れる。周りの木々はなぎ倒され、皆に向かって飛んできた。
「おっと、これはいけませんな」
村長がすぐさまバリヤーを使い、事なきを得た。
が、次々に衝撃はが飛んでくる。その度に周りにあった木や岩が飛んでくるのだ。
「こりゃ、とんでもない闘いになっとりますのぅ」
「だ、旦那様っ……」
「我々に出来るのは早く避難することだけのようですじゃ。閣下。すぐにここを離れましょうぞ」
「あぁ、その通りじゃな。皆の者! さらに移動するぞ! 疲れ者は申し出よ。ポーションもまだまだある。すぐに行くぞっ!」
レイ達は辺境の村を目指し、すぐに移動を開始するのだった。
一昼夜の間、ひたすらに走った。そして、夜が明けると辺境の村に一行は到着した。
「しかし、凄まじい闘いじゃ」
村長が額の汗を拭きながら言う。
「同感じゃのぅ。まさか、ここまで衝撃が走ってくるとは……。あの雷鳴のような光。あれは旦那様と魔神の闘いだとすれば、元魔王城の周りは壊滅じゃろうな」
辺境の村からでもはっきりと見えるほどの闘い。ソウは丸一日中、闘っているのだ。
「これから皆の者で祈りを捧げようぞ! 我らが祈れば、主たる大魔神ソウ様に必ず届く! よいか皆の者!」
村長の叫びに村にいた住民達、数万の祈りが捧げられる。
ソウの闘い。これは今後のこの国の将来を決める闘いなのだ。
「なんとしても勝ってくだされ! ソウ様!」
村長は村のバリヤーを強めつつ、ひたすらにソウの勝利を祈るのだった。
*
魔神との対決が始まって丸一日が経った。
常に死と隣り合わせのギリギリの攻防だ。
というか、実は何度か死んでいる。
ただ、意識のあるうちにヒールと唱えたら何とかなったのだ。腹を切られ、両足を切られ、腕を切られとあちこち切られた。
その度にヒールで治しつつ闘いを続けている。
もちろん、魔神もそうだ。
俺に切られる度に回復魔法を使いやがって! このチートラスボスが! 初期のファミ○ンRPGかよ!?
ただ、俺の精神が疲れた。何度も味わった苦痛。これがじわじわと精神に効いてくる。
正直、なんで闘えているのか不思議なくらいだ。
「くはっ! しぶとい羽虫の貴様でもやっと疲れが見えてきたようだな! この勝負、俺様がもらった!」
ここぞとばかりに魔神の勢いが止まらない。より魔力を乗せ果敢に俺を攻撃し始めた。
「くっ、まだこれほどの余力を残してやがったのかよ!?」
魔神の剣が俺の腹に突き刺ささる。
「ぐああっっ!」
すぐさまヒールを唱える。だが、その一瞬の隙を突かれた。
魔神は剣を振りかぶり、止めの一撃を放とうとした。
しまった。これまでか!
振り下ろされる一撃は俺の体を飲み込むほどの大きさだった。
俺の体が塵となって消えていく。まるでスローモーションのように消えゆく俺の体……。
そんなとき、レイと村長の声が聞こえた。
「旦那様~~~~っ!!!」
「ソウ様っ!!!」
俺の目の前にわずかに現れた黒い霧。その中で祈りを捧げる数万の民達。
その祈りが俺に最後の力を分け与えてくれた。体にに湧いた魔力を使い、俺が使った魔法は……、
「リザレクション!」
魔神の攻撃によって消えゆく体が、時間を巻き戻すように戻っていく。魔神の剣が振り終わり、地に剣が突き刺さる。その上に俺は復活を遂げたのだ。
魔神の目が見開く。
剣を戻そうと腕がピクリと動いた。だが、もう遅い。
俺のホーリーソードは魔神の顔面を横にたたき切る。そのまま回復する余裕を与えるつもりはない。何度も剣を振り続けた。魔神の顔は細切れになり、そして、体すらも。
魔神の体をこの世に残すつもりはない。
すぐヘルファイアーで残った体すら燃やし尽くした。
だが、まだ終わっていなかった。
魔神の精神体は黒い霧となって現れた。
「きっ、貴様ごときに……っ」
しつこい奴だ。
こんな奴はとっとと成仏させるに限る! ターンアンデッド!!!
神聖なる光が魔神の精神体を包み込む。
「こ、このままではっ、終わらせんぞぉ!!!」
黒い霧が大きくなり、俺を包み込んだ。
「何ぃ! 精神体が魔法だと!?」
「グッハッハッハッハ! 貴様を別世界へ送り込んでやるわ!! グワーハッハッハ……」
神々しい光に飲み込まれ、消えゆく黒い霧。
だが、俺の体もまた、黒い霧によって消えていく。
「な、なんとかならないのか! くっ! の、飲み込まれて……しま……」
俺の意識はそこでプッツリと途絶えるのだった。
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