第33話 森のダンジョン ボス戦 2



「何か、勘違いしているようだが……、もう死んでるぞ? そいつら」


「クワッ~~~、クワックワッ、何をバカな、いっ!?」


 ドラゴンの首はズレ落ち、ワイヴァーンは細切れになって散っていく。


 ミーナもポカンとその様子を見ていた。


「な、ななな、何が起きたんだ! 一体なにをしたっ!」


「何をしたって、切った」


「切ったそぶりも見せてないじゃないかっ! はっ、もしやまだ他に仲間がいるんだな? 卑怯だぞ! 正々堂々と戦え! この卑怯者め!」


「おいおい、俺の動作が見えなかったとはいえ、酷い誤解だな。それに自分が切られていることにも気付かないとは……、やれやれ」


「俺様も切られているだと? 何を世迷い言を……あれ? な、何だ胸から血がっ!」


 タラリと垂れ落ちる血はどんどん多くなり、やがて、上半身がずれていくと、噴水のように血が飛び散った。


「さて、取りあえず切ってはみたが……、やはりな」


 じっと見ていると、切ったはずの巨大コウモリの体が繋がっていく。


 コイツにも自動で修復される能力があるようだ。前にノスフェルと戦ったのが役にたったようだ。


「ミーナ、こいつも体が修復される能力があるようだ。体がくっついたら、また足止めしてもらってもいいか?」


「えぇ、いいけど……、でも私の攻撃じゃ大して……」


「まぁまぁ、やってみようよ」


 ミーナの言いたいこともあるだろうが、レベル上げに使えるかどうか判断したいしな。


 巨大コウモリの体がくっつき、立ち上がった所で、タイミング良くミーナが剣を投げつけた。


 聖属性の剣は巨大コウモリによく効くようで、奴は飛び上がる前に翼を切り裂く。


 そこを、カマイタチを当ててから、ホーリーソードで切り刻んだ。


「ぐあああああっっっ!!」


 奴の絶叫だけが木霊し、また倒れ込んでいく。


 さて、レベルはと……お? まぁまぁ上がるじゃないか!


 俺の風魔法は一気に1350まで上がっている。


「ミーナのレベルはどうだ? 結構上がったんじゃない?」


「え? 確認してみる……、えっ? えええええっっっ!!!」


「おい、大丈夫か? そんなに驚いて」


「いや、私のレベル……、1425だって……。うそ……」


「まぁ、一回目だし、そんなものだよ。よし、そろそろ次行くぞ!」


「あ! 巨大コウモリが復活するのね」


「あぁ、またタイミングみて当ててくれ!」


 そこから二人で共同作業が始まった。もちろんミーナにはこれから数千週は軽く倒すなんて言ってない。やる前から言っちゃうと心が折れちゃうからな。




 巨大コウモリの絶叫が轟くこと数百回目。すでにミーナの眼はどんよりと疲れており、俺に呆れの目を向けてくる。


「ソ、ソウ……、これ一体いつまで続けるつもりなの?」


「ミーナ、まだ数百回しか倒してないぜ? まだまだパーティはこれからだ! 頑張るぞー!」


「ま、まだ続くんだ……。こんなことしてどうなるっていうの? もういいかげん、この巨大コウモリが可愛そうに感じてきたんだけど……」


「いいや、まだだ! こいつは下で働く者の辛さを全くわかっちゃいない。これぐらいで俺の気が治まると思ったら大間違いだ!」


「そ、……そうなのね。って、あれ? 私の剣だけで奴が死んじゃった?」


「あー、レベルがかなり上がったんだな。今いくつになってるの?」


「えーと、えっ!? ウソ!? 4000を超えてるわ!」


「そんなもんだろうね。まだもうちょっとコイツから搾り取れそうだし、もうちょっと頑張ろう! あ、コイツへの攻撃を精霊魔法でお願いしていいかな? 俺が止めを刺すから」


「え? えぇ。わかったわ」




 そこからさらに進むこと数百回。


「あっ、精霊魔法だけでも倒せるようになったわ!」


「おー、ついにそこまで上がったか! おめでとう! 今レベルいくつになった?」


「すごいっ! 5680だわ! それに精霊魔法も4288まで上がってる! 今までとは比べものにならない強さよ!」


「俺のほうもそろそろ打ち止めかな。風魔法は5000超えたけどこれ以上は上がりにくくなってきたな」


「じゃ、こいつはどうするの?」


「んー、反省してるかなぁ?」


「十分してると思うけど……」


 奴が会話を出来るまで回復するのを待ってやると、奴は突然、頭を地面につけ、完全平服した。


「ご、ごめんなさい~~~~! 俺が間違ってました! こ、これ以上殺すのはやめでぐだざい~~~っっっ!」


「どうやら、少しは反省したらしいな」


「はい、もう全て、何から何まで! 俺が間違っておりました! 全部、ソウ様のおっしゃった通りでございます!」


 すでに尊大な態度は微塵もなく、哀れな一匹のモンスターとなり果てていたのであった。


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