第30話 宝箱を守る者


「お? また敵が強くなったかな?」


 ダンジョン3Fに出てくる敵は武装したオーク、や馬顔の大男、そしてオーガがうろついていた。


 オークも鎧を着込んでおり、魔法があまり効かなかった。そのため、このフロアーは俺が敵を倒しながら進むことになった。


 ミーナは先行して、魔法をどんどん当てていき、ヘイトを集めつつ駆け抜けていく。俺はその後から切り倒していくだけの作業だ。


「ミーナ、大丈夫か? このフロアーから敵の強さが段違いになってるぞ!」


「えぇ、でもこれくらいならっ、はぁっ!」


 ミーナも無詠唱が出来るようになり、さらに魔法の速度が上がっている。順調にレベルが上がっているようだ。


 俺は敵の多く集まる場所を目指し、マッピングの魔法で一気に駆け進んでいったのだが……。


 まいったな、行き止まりにモンスターが多数待ち構えていたのか。


「すまん、道を間違ったみたいだ」


「ふふっ、ソウでもそんなことあるのね」


「俺だって万能じゃないさ。斥候じゃないからな」


 ミーナが魔法をかけたあと、すぐにホーリーソードで、モンスター達を倒していく。


 このフロアーで一番奥にいたオーガは自分の体よりも大きな剣を肩に担いでおり、それを振り回して攻撃してきた。


 その攻撃を躱すと、オーガの攻撃により、地面はクレーターのようにヘコんだ。


 凄まじいパワーだ。だが、当たらなければ問題ない。


 隙だらけになったオーガの横からホーリーソードを一閃し、切り倒すと、このフロアーの敵は片づいたようだった。


「よし、引き返すか」


「待って、ソウ! あれを見て!」


「ん? あれは!?」


 銀色に輝く箱がオーガを倒した場所から出現したのだ。


「宝箱ってやつか?」


「えぇ、しかも銀色! 初めて見たわ!」


「開けてみよう」


 中を開けてみると、中にはボロい袋が出てきた。


「ん? なんだこりゃ?」


「え……、これって、もしかして……、やっぱり! マジックバッグだわ!」


「マジックバッグ?」


「そうよ! すごいわ! お金じゃ買えないのよ!」


 なんだかよくわからないがすごく喜んでくれてるみたいだな。


「そんなにすごいんならあげるよ。使ってみて」


「へ? いいの?」


「あぁ、どうせまたそのうち出るでしょ。いいっていいって」


「わぁ! ありがとう! ソウ、大好き!」


 ミーナは俺の体に飛び込み、抱きついてきた。


「わわっ!」


 その勢いが強すぎて、壁に背中をぶつけると、その後ろの岩が少しズレたように動いた。


「あっ、ゴメン。ソウ、大丈夫?」


「あ、あぁ、大丈夫なんだけど、後ろの岩が動いた気がするんだ」


「え? 岩が動く?」


「あぁ、この岩が……」


 岩を思いっきり手で押してみると、思ったよりも軽い力で動き出した。


「やっぱり! この岩、動くぞ」


「す、すごい! どうなってるの?」


 岩を動かしきると、現れたのは下への階段だった。


「行ってみよう、ミーナ」


 ミーナはゴクッと喉を鳴らし、「えぇ」とだけ答えた。




「こ、ここは!? すごい、これ全部……」


「わ、わわわわ!!」


 階段の先は明るいフロアーが広がっていた。


 そして、フロアーにはズラリと並んだ宝箱が。


「すごいすごい! 普通の宝箱だけじゃなく、銀色や、金色まで並んでるなんて!」


 壮観だなぁ。たしか、ファンタズムスターズでもこんな部屋があった気がしたな。夢幻界の果てに3のハコ割りは燃えたなぁ……。うん。


「片っ端から開けていくか。っていってもいくつあるんだ?」


 俺とミーナはどんどん宝箱を開けていくのだが、全部回収するまで結構な時間がかかるのであった。




 お宝を一々ためすわけにもいかないのでミーナの持つマジックバッグが早速役に立った。


 片っ端からマジックバッグに入れ終わり、ふぅ、と一息ついた。


「やっと全部回収できたかな」


「まって、ソウ。あそこ!」


「ん?」


 宝箱が並んでいた奥には虹色に光る宝箱が高い岩の上に置いてあったのだ。


「こんな色の宝箱もあるのか!」


「綺麗……」


「よ、よし。開けてみるぞ」


「うん!」


 そっと宝箱を開けていく。


 すると、地震が起き、地鳴りのような音が激しく辺りに響いた。


「しまった。罠か!」


「どうしよう、ソウっ!」


 ミーナは俺の腕にギュッと抱きつき、様子をみている。


「大丈夫だ。つかまっていろ」


 地震が収まり、フロアーの中央には見慣れぬ姿の男が一人立っていた。



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