第133話 入場 4



「次の代表者です! ドラゴン族代表! バハル!」


 ドラゴン族……、大きいのかな? ……って! なんだありゃ?


 歩いてきたのは俺を大差ない大きさの男だった。


 白く長い髪を後ろに束ね、厳つい身体つきの男が白いマントを羽織って歩いてくる。


「さぁ、巨人族に続いて、ライバルのドラゴン族からバハルがやって参りました!」


「はい、このバハルですが、伝説によると年齢は10万歳を超えているそうです! ドラゴンの身でありながら、神竜と称えられ、亜神となり、破壊竜、バハムートの異名も持っております! いやぁ、ドラゴン族である彼と永遠のライバルである巨人族のギガースの直接対決! 見たいですねぇ!」


「ローファンは、もし両者が闘った場合、どちらが勝つと思われますか?」


「んー、難しいですねぇ! 両者ともに亜神であり、パワーも五分と五分と聞いております! こればかりは結果を見るしかないんじゃないでしょうか?」




「次の代表者は! 死の国代表! ジーク!」


 む? なんだこの気配? さ、寒気が止まらんとは……。


 まさに迫り来る死の気配。俺の背中が汗に濡れ、ヒンヤリとする。


 落ち着け、まだ闘う時じゃない……。しかし、なんて威圧だ……。


「さぁ、死の国からジークがやって参りました!」


「この死の国はトップの入れ替わりが激しいんですが、現在のトップがこのジークです! リッチという死人の中では最上位の魔法使いですね。闇属性の魔法は右に出るものはいないと言われております。その真価がこのトーナメントで問われるでしょう!」


「いやぁ、ジークの目が青白く光ってますね! 怖いなぁ……」


「えぇとリサさん、彼の目は死の魔眼です。くれぐれも見てはいけませんよ!」


「もっと早く言って下さいよ! 死んじゃったらどうするんですか!」




「次の代表者! 元天使族! ルシフェル!」


 背中に翼の生えたイケメンが優雅に歩いてきた。手には白く輝く長大な剣を一振り持っている。


 顔立ちはイケメン待ったなしなんだが……、なんだあの目の下のクマは……。


「さぁ、元天使族だったルシフェルの登場ですね!」


「いやぁ、ほんとよく参加してくれましたよね! ルシフェルは私のずっと先輩に当たる方なんですが、性格が激しくてですね……。私もルシフェル先輩に連れられて色々な地獄を見て回ったのも良い思い出です!」


「因みにどんなところを回ったのですか?」


「えぇとですね。ベヒーモスが暴れ回って世界が壊れそうになってしまった時や、大悪魔サタニスが世界を支配しようとしたときにルシフェル先輩が先陣を切って闘ったんですよ! いやぁかっこよかったなぁ! あの時は……」


「そ、そんなことがあったんですね……」




「最後の代表者は! 人間族代表! 黒騎士!」


 花道を歩いてくるのは漆黒の鎧、漆黒のマント、漆黒の剣を携えた騎士だった。フルフェイスの兜をかぶっており素顔は全く窺うことが出来ない。


 ん? 最後は俺と同じ人間か。果たしてどれほどの強さなのか……。


「さぁ、最後の代表者は人間です! 天使達にとって一番赴くことの多い人間界ですが、ローファンさんは黒騎士について何かご存じでしょうか?」


「はい、人間の国々の中で最も大きな国である、グラナーダ帝国。そこの闘技場で不敗を誇る戦士ですね。人間族だけを相手にしておりますが、400戦不敗という戦績を誇っております。これは最早、人間界の生きる伝説となっております。規格外の人間の力、このトーナメントではどこまで通用するのか? 楽しみですねぇ!」


「400戦不敗ですか! これは期待できそうです。しかし、獣人族の代表も急遽ですが、人間族になってしまいましたよね? 人間族だけ2人ということになっております」


「えぇ、そこなんですよ。これでは他の種族にアンフェアなことになってしまいます。そこゴッズトーナメントに参加する神々が協議した結果、最初の第一試合、これをREN VS 黒騎士 とすることでどちらが人間族で最強なのか? これを決めてもらうこととなりました」


「なるほど……、人間族最強ですか! これも楽しみな試合になりそうですね!」


 くっ、一刻も早くニュートを倒して、ザッツにかけられた呪いを解かなければならぬと言うときに……余計なことを!


 握りこぶしが震える。


 そんな俺に対し、黒騎士が近づいてきた。


「おやおや、いきなり俺と対戦することになってぶるっちまってんのか? おめぇみたいな優男の来る所じゃねぇんだ。とっとと帰って彼女と乳繰り合ってるんだな」


 この黒騎士とやら、人間代表のくせになんと口の悪い……。


「俺はお前に構っている暇などない。忙しいんでな」


「ふん、今なら棄権しても許してやろうと思ったが……、どうやら死ななければ分からんようだな。よかろう。1回戦で貴様をあの世へ送ってくれるわ」


「それはこちらの台詞だ」


 黒騎士は俺を睨み付けてくる。俺もまた睨み返す。


「おーっと、人間族同士、いきなりの場外宣戦布告かぁ?」


「両者ともに気合い充分ですね! これは1回戦から楽しみになってきました!」




 結局、黒騎士は案内係の天使に促され、自分の場所へと戻っていった。


「ここに集いし、16名の戦士達! この世界で最強は誰なのか? ゴッズトーナメントの開催をここに宣言します!!!」


 リングアナの宣言がされると、会場は割れんばかりの声援に包まれるのであった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る