第182話 二回戦第一試合 決着
ズールが立ち上がろうとした。だが、膝がグラグラと揺れ、バランスを崩し、地に手をついた。
これならば、躱すことも出来まい!
俺は天を見上げた。上空には俺の魔力によって集められた黒雲が渦を巻くように集まっている。稲光の閃光と耳をつんざく轟音が鳴り響き、そして、特大のイカズチが俺の剣に落雷した。
「あああーーーーーッッッ!!! RENの集めた雲から雷が落ちました〜〜〜〜ッ! RENは大丈夫なのでしょうかッ!」
「大丈夫ですっ! あれもRENの魔法の一つなのでしょう! それにしても天候を操るなんて、子供に聞かせるおとぎ話でしか聞いたことありませんでした! RENも相当の魔法使いだと言わざるを得ません!」
「それにしても雷が止まらないッッッ!!! いくつもの雷撃がRENに降り注ぎますッ! まるで人間避雷針ッ! 極太の雷が何十本と集まっているーーーッッッ!!!」
俺の聖剣は雷を幾十本も受け止めた。そして、そのパワーがそのまま剣に溜め込まれていったのだ。黄金に光り輝く剣は、聖剣と言うに相応しい威光を放ち、見るものを圧倒した。
「こ、これはーーーーーッッ!!! 雷を帯びた剣がまるで一本の大剣のようになったーーーッ! 正に黄金の剣ッ! 伝説に云う聖剣のようですッッッ!!!」
「ま、まさか人間にこれほどの剣を造る技術があるとは思いませんでしたね! それこそ、バッジやドワーフの古老の作と遜色ない出来ではないでしょうか!」
「ズールよ、この技で地へと還るがいいッ!
今、雷の力を最大限にまで蓄えた剣が振り下ろされた。
剣の刀身がまるで伸びていくように、イカズチが長い剣を形造るように変化していく。
閃光と轟音を孕みながら、空を切り裂き、その雷の刃がズールへと向かっていく。
「ぬうううううりゃああああああッッッ!!!」
ズールは必死の形相で自らの魔力を放出し、六本の腕に巨大な炎を出現させると、それを俺の剣に向かって放出した。
その放出された六つの炎は互いに絡み合っていき、やがて一つの巨大な炎と化す。ズールの放った炎は回転しながら、完全に融合し、青黒い炎へと変化した。
「ここでズールも仕掛けたーーーッッッ!!! 極大の炎の弾が、RENの雷刃とぶつかり合う〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
ズガガガガガガガーーーーーーーーーーアアアアアァァァァァッッッッッ!!!!!
俺の意地とズールの意地。ぶつかり合う雷と炎。
雷の刃が炎に当たると、激しい閃光を放った。俺の周りを暴風が駆け抜けていく。
だが、まだだ。今はまだ、奴の炎と俺の刃は拮抗している。俺はさらに魔力を込め、力を込め、意地を込め、剣を押し込んでいく。
上空から放たれる雷が俺の剣に落ち、さらなる力を与えてくれた。
「アアアアアアアアァァァァァァッッッ!!!!!」
少しずつ、少しずつだが、俺の刃が炎の巨弾を断ち切っていく。
もう少しだッ! もう少しで終わりだッ!!!
ふと、離れた所にいたズールの姿が目に入った。
その顔は真剣ではあったが、今までのズールとは全く違っていた。
目の色は元に戻っており、肌の色も赤黒さが無くなり、そして、体型も元に戻ったかのごとく、一回り小さくなっているように見えたのだ。
この最後の一撃に……、神から授かった力の全てを差し出したのだろうか。
どことなく戦うことを嬉しそうにし、口元が笑っているかのようなズールの表情は、本来、俺が戦いたいと思っていたズールそのものだった。
だが、遅すぎた。もう決着は目の前なのだ。
俺の刃がズールの炎を断ち切った。
そして、ズールの身体さえも、肩口から斜めに、真っ二つに切り裂くのだった。
「あああああーーーーーーーッッッ!!! RENの雷刃が、ズールの炎を斬り、さらにズールの身体までも斬り裂いた〜〜〜〜〜ッッッ!!! 勝者ッッッ! RENッッッ!!!!! 長い戦いに、終止符を打ったのは獣人族代表、RENでしたーーーーーッ!!!」
「凄まじい戦いでしたね! 両者の意地と意地がぶつかり合う、執念を感じる試合でした! ですが、終始、RENが有利でしたね! いやはや、恐ろしい代表者がいたものです! この大会が始まる前は完全にノーマークでしたからね!」
「全くです! 聞いたこともない男でしたから、恐らく、会場の皆さんも期待してなかったのではないでしょうか? しかし、蓋を開けてみれば、この圧倒的な強さ! 見るものを強引に納得させる強さがRENにはありますね!」
「えぇ、これは次の試合も非常に楽しみです!」
「ん??? RENがなにやら魔法を使っていますか? どうしたんでしょう?」
「あ……、あれは!!! まさか……リザレクションでは!?」
「リザレクションですか?」
「えぇ、死んだ者を蘇らせるという
「本当ですか? って……、こ、これはッッッ!!! 時を巻き戻すが如く、ズールの身体がくっついていきます! なんという奇跡ッ! 今、ここに、ズールが蘇った〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
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