第181話 剣戟の果てに
「きょ、驚愕の魔法ですッ! ズールの放った大魔法、それも連発で放たれた炎の弾。その数7発! そのいずれもが、RENの雷の嵐に飲み込まれ、消失してしまったーーーッ!」
「RENの雷魔法ですが、まさか防御に使えるものがあるなんて驚きましたね。しかもズールの炎の魔法は二つの上級炎魔法を二発動時に放ち、それが絡み合いつつ威力を増す、極大魔法と言って差し支えないものです! それを六発も放ったというのに……、ありえないことが舞台で起こっていますよ!」
「さて、魔法はそろそろ打ち止めといった所かな?」
ズールを見やると、奴は腕をブルブルと震わせながら唇を噛み、上目遣いにこちらを睨みつけてくる。
「ならば、次は俺の番だ!」
勢いよく飛び出し、また雷の魔法を剣に纏わせつつ振っていく。
「あーーーっと、RENがまたしても剣に雷魔法を纏わせ、斬りかかっていくーーー! ああっ! ズールは魔法を使いません! 剣のみで打ち合っていきますッ!」
「あれだけ極大魔法を七発も放ったわけですから……、MPの回復を待たなければ次の魔法は使えないのではないでしょうか! 恐らくRENは自分がズールよりもMPが多いのを分かっていて、魔法戦に持ち込んだんでしょう! ただ、ズールのMPが切れている、となると、ここからはRENが有利に試合を運ぶかもしれません!」
「なるほど、RENが巧みに試合をコントロールし、ズールのMP切れを誘ったというわけですか! それが本当ならば、RENは相当に頭のキレる戦士ということになります!」
解説者の言う通り、ここまでは俺の想定した試合だ。だが、窮鼠猫を噛むという言葉もある。まして相手は百戦錬磨のズールなのだ。気を抜くわけにはいかない。本当の戦いはここからと言ってもいいだろう。
剣戟を交わすたびに俺の剣の雷魔法がズールへ当たり、確実にダメージを与えていった。
だが、ズールは俺の魔法を喰らいつつも腕を振るのをやめなかった。ダメージを無視してでも剣を振るってきたのだ。
さすが、ズールだ。ここで防御に徹するようでは一気に追い込まれてしまうことが解っている。本当にやりずらい……、だが勝つのは俺だッ!
「こ、ここでRENが攻勢だーーーッ! 剣と剣がぶつかり合うたびに雷魔法がズールに当たっていきます!」
「ですが、ズールもよく耐えてますよ! 魔法のダメージはあるでしょうが、ここで押されるよりはダメージを負ってでも前に出ることを選んでいます。まだ冷静に局面を捉えてますからね。その目は全く死んでません!」
幾度もの雷魔法の直撃を受けてもズールは構わずに剣を振り下ろしてくる。
俺はこの瞬間に勝機を見出した。
だが、すでに十数発もの魔法を受けたズールの身体は動きが鈍っていたのだ。
振り下ろされる剣にカウンターを取るようにズールの腕を切り裂いた。
もらったッッッ!!!
この試合で初のクリーンヒット。ズールの右腕のうち一本の腱を斬った。
だが、ズールの攻撃はそれでも止むことがなかった。
「ぬうううりゃあああああッッッ!!!」
怨嗟に満ちたような低い叫び声を上げ、ズールの剣が迫ってくる。
その気迫、怒りの形相、身に纏うドス黒いオーラ。並の戦士であれば、身動きが取れなくなるほどのプレッシャーを放ってくる。
だが、俺は冷静だった。カウンターで中級程度の雷魔法を当て、さらに斬り掛かってきた左腕の腱も斬ることに成功し、動きを封じた。
これで奴の腕は二本が使い物にならないはず。
徐々にだが、優勢になってきたのを感じた時、ズールの動きが急に止まった。
「む?」
ズールは肩で息をしつつも剣を構え、戦意は衰えることを知らない。
一体何をするつもりなんだ?
俺が注視していると、ズールは傷ついた腕を二本とも、自ら切り飛ばした。
「〜〜〜〜〜ッッッ!!! 正気でしょうか? ズールが自らの腕を切り落としてしまったッッッ!!!」
こ……、これは?
ズールは回復した魔力を腕に集めた。すると、切り取られた腕の先から魔力が放出され、黒い魔力が腕の形を造っていく。
「こ、これはーーーーーッッッ!!! ズ、ズールの腕が復活! 何もなかったかのようにズールの腕が元通りになっています!」
魔力で腕を生やすだと??? そんなもの聞いたこともないッ!
恐らく神からの
ズールはまだ肩で息をするほどに疲れている。それに魔力を使って腕を再生したこともあり、MPはほぼ無いだろう。今を逃して勝つチャンスはないだろう。
ならば……、
「おーーーっと、RENが仕掛けたッ! しかし、ズールの腕も復活していいる! ズールも前に出ました!」
あの状態でも前に出てくるとは……、やはり奴も生粋の戦士ということか!
俺の意地とズールの意地が剣戟となって交錯していく。
激しく火花を散らしながら剣と剣がぶつかり合い、そして、鍔迫り合う。
だが、俺にはまだ魔法があるッ! これでも喰らえッ!
剣から放った上級の雷撃、ヒュージサンダーはズールに直撃し、その身体を吹き飛ばした。
「これで終わりだッ!!!」
俺は剣を天高く掲げた。そして、体内の魔力を一斉に天高く向かって放出するのだった。
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