第66話 黄泉への扉



「くっ、思ったよりも手間がかかる!」


 リーダーからもらった剣では衝撃波がビルまで破壊してしまう。範囲魔法もあちこちに襲われている人がまだいるため、使えない。


 ちっ、面倒だが、ホーリーソードで少しずつ対処していくしかないのか。


 敵は、獣人やら鬼、顔のない奴、河童やカラス天狗らしき者など様々で、それが、一帯を覆い尽くすほどの数だった。


「こりゃ、だめだ。普通にやってたら間に合わない。街が飲み込まれてしまう!」


 黒い霧から次々と現れる妖怪に対し、有効な手立てがないのだ。


 俺がホーリーソードを一振りして3、4匹ずつ倒す間に、黒い霧から10匹以上出てきてしまうのだ。


 くっ、こんなときには、リーダーから教わった錬金術で……、


 俺は魔法の開発に取りかかる。妖怪だけを追尾して倒す、そんな魔法だ。威力は低くてもいい。その分、数を打てるように……、風魔法で方向を思った通りに変えれるように……、


「出来た!」


 手から短めのホーリーソードを取りあえず10本出し、それを敵に射出する。射出した10本のホーリーソードは敵を追尾して、突き刺さる。


「よし、問題なさそうだ! これなら!」


 手のひらから次々にホーリーソードを出し、射出していく。短い光の刃が数百発も出すと、敵が山を作るように倒れていった。


 おお! こりゃ楽な上に、早い!


 さらに数百発ほどこのホーミング・ホーリーソードを放つとほとんど片づいてしまった。


 残ったのは強めの敵だけということか。ならば。


 俺はアイテム袋から刀を抜いた。俺の神聖な魔力を吸い、刀は白く染まっていく。


「行くぞぉ!」


 駆けだした先にいたのは青い肌、巨大な一本角の鬼。巨大な金棒を自在に振り回し、辺りを破壊しまくっている。


 当然、俺の存在に気付くと、目一杯に胸を膨らませて、吠えた。


 音波による攻撃なのだろう。俺は自分の周りにバリヤーを張っていたため、バリヤーが激しく振動するだけで済んだ。が、まともにくらえば耳の感覚が無くなるのは必至だ。


 青鬼は近づく俺に対し、大金棒を振り上げる。


「遅いっ!」


 青鬼が振り上げている間に、俺は目の前にいるのだ。


 横一線に刀で切り、そのまま後ろへ抜けていく。


 青鬼の体は金棒を振り上げた勢いのまま、上半身が上方にすっ飛んでいった。


「よし、次!」


 空から小さな竜巻をいくつも起こし、ビルを破壊しているカラス天狗。


 その大きな翼で宙に浮き、大きな葉で出来たうちわを振り回す。


 俺に向かってくる、いくつもの竜巻。


「こんなもの!」


 俺は刀を上段から振り下ろし、竜巻を切り裂いた。


 風はウソのようにやみ、静寂が訪れる。


 カラス天狗は目が飛び出るように丸くして、口が開いたままだ。


 バリヤーを足場にジャンプし、一気に敵に迫る。


 奴も刀を抜き、振り下ろしてくる。


 刀と刀がぶつかり合った。だが、俺の刀はリーダーの作った特別製。しかも魔力をたっぷりと吸い込み、その強度は計り知れない。


 カラス天狗の持っていた黒塗りの刀も業物であるが、俺の刀には適わなかったようだ。黒塗りの刀にヒビが走る。


 そのまま黒塗りの刀を奴の体ごと切り裂く。


 絶叫を上げ、地に落ちていくカラス天狗。


 その闘いを見ていた、八本の首を持つ大蛇がいた。


「キッシャーーーー!!!」


 叫び声と供に液体を吐き出した。


「おっと」


 身を屈めて液体を躱す。「フシャ~~」と、後ろの方で何かが溶けていくような音が聞こえてくる。


 酸を吐き出しているのだろう。だが、そんな遅い攻撃では俺に掠りすらしないぞ。


 残像を残しつつ移動する。八岐大蛇はその残像に酸を吐き出すのに精一杯なのだろう。俺の本体がすぐ近くにいることに気付かない。


 刀で首を次々に切り下ろし、八本の首を全て落とすと、奴の体は体液を吹き出しながら、倒れ込んだ。


「ふぅ、こんなところか」


 そして、お決まりのように、また黒い霧が現れ、妖獣達を包み込む。


 そして、凝縮されたように集まっていく。すると、黒い霧から巨大な脚が……、


「悪いが、お前に構ってる暇はない! 黄泉の国へ案内してもらおう!」


 風魔法のトルネードで脚を強引に押し返した。


 よしっ、あの霧へ突っ込む! うまく行ってくれよ!


 俺の体は黒い霧に包まれた。ただ空中に漂っているかのような浮遊感。


 よし、今のうちにこの霧も分析しなくては……。俺は錬金術を使い、この霧の成分をしっかりと記憶する。


「よし、データが集まった。元の世界に帰るためにもデータ集めは基本だからな」


 そんなことを思っていると、霧が晴れだした。ぼんやりとした明かりが見えてきたかと思うと、俺の体は見たことのない世界へ案内されるのであった。


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