第99話 聖神の出現


「き、貴様などに遅れを取るはずか……」


 RENはうめき声にも似た声を絞り出す。


「REN……。俺がソウだと言ってもわからないんだろう? 今からお前を縛ってい呪い、解放してやる」


 俺はRENを睨みつける。


「やかましいわっ! 貴様さえ、貴様さえいなければ魔王を倒し、人類の繁栄に導くことができたものだ! 許さん。許さんぞぉっっっ!」


 RENは聖剣を振りかざし、襲いかかってきた。


 刀を取り出し、聖剣と打ち合う。


 火花がちり、鍔迫り合いとなる中、闇魔法、ダークファイヤーを無詠唱で使う。


 RENの背中を燃やすと手元の力が抜け、俺の刀でRENの体を突き飛ばした。


「ぐうっ!」


 よろめいた所に廻し蹴りを放つ。


 ギンッっと鈍い音が鳴り、黄金の鎧に黒い筋が入っていくのが見えた。


 いくらバフを多数かけていたとしてもこれだけ直撃を受けていれば、いつかは壊れるはずだ。


「おまけだ!」


 吹き飛んだRENに魔法の追い打ちをかけまくる。


 ヘルファイアーとトルネードカッターの合成術、ヘルストームは、爆発の中にカマイタチが混ざる強烈な魔法。RENの体は爆発に飲まれ、その姿は全く見えなくなる。だが、所々からカマイタチが微かに光りを反射しながら縦横に走り回った。


さらに、ホーリーソードとサイクロンの合成術、聖暴風剣ホーリーブラストソードを使う。このオリジナル魔法は竜巻の内部にホーリーソードがいくつも混ざっており、飲み込んだ敵を聖属性の剣が切り刻むもの。聖暴風剣ホーリーブラストソードは先ほどの爆発を一気に吹き飛ばし、中にいたRENの体をいとも簡単に宙に舞わせた。そして、砕けた鎧をさらに切り刻んでいく。


 長い滞空時間を終え、地面に激突したRENはヒクヒクと体を蠢かせるだけの存在と成り果てているのであった。


 RENの着ていた鎧は全て消え失せ、生身のまま、聖剣だけを握っていた。鑑定をかけてみると、生命の鼓動はまだ残っている。だが、すでに意識を手放しているのだった。


 後ろで見ていたレイや市長が固唾を飲んで見守る中、俺はRENにヒールをかけ、回復させた。


 RENの指先がピクリと動き、閉じていた目が開く。


「ぐっ、こ、ここは……」


 どうやらまだ体を起こせないようだ。


 俺はRENの持っていた聖剣を蹴り飛ばし、肩を貸すように持ち上げた。


「目が覚めたか?」


 RENは目を何度も瞬かせ、首を左右に振る。


「こ、ここは? それにアンタは誰なんだ?」


 戸惑いの表情を浮かべるREN。


「俺はソウ。アルティメットハンターズのソウだ。覚えているか?」


 俺の説明にRENは目を丸くした。


「お前があのソウだというのか?」


「あぁ。完全に目を覚ましたようだな」


 RENは少しずつ体に力が戻ってきたようで、自分の足で立ち上がった。


「お、俺は、一体何をしていたんだ? 悪い夢をずっと見ていた気がするんだが、あれは現実なのか?」


「色々と答えてやりたいのは山々だが、時間がなさそうだ」


 遠くではリーダーがミウを、霞さんがチコの呪いの装備を取り去り、それぞれの決着をつけていた。


「時間がない……とは?」


「あぁ、ここまで派手にやってしまうと必ずこの場に干渉してくる奴らがいるのさ」


「干渉?」


 RENは眉を上げる。


「ま、まだわからないのももっともだ。あそこにレイと市長がいる。頼りになる人たちなんだ。一緒に避難していてくれ」


 そう言い終えるやいなや、周りにあった兵たちの魂が集まっていく。遠くからはエルガの戦っていたほうからも凄まじい数の魂が黒く寄り集まる。


 レイにRENの体を任せ、その集まる場所へ素早く駆けつけた。


 そこにはリーダー、霞さん、エルガが到着し、アルティメットハンターズのメンバーが勢揃いした。


 黒い霧は大きく集まり、中から巨大な足が現れた。足だけでも数メートルはある。


「全く、こんなデカブツが出てくるなんて。ソウ君の言った通りになっちゃったね」


 リーダーの言葉には恐怖の色は見当たらないどころか、ワクワクしてるような感じだ。


「この世界で初めての共闘ってところかしら?」


 霞さんは感慨深げだ。


「ようやく、獲物に会えるのか。期待外れでないといいのだがな」


 そんなふうに言ってるエルガは大分期待してたみたいだな。


 黒い霧からはすでに両足と胴体まで現界していた。


「んじゃ、予定通り今回は皆で闘うってことで!」


 俺が声をかけるとリーダーが音頭を取ってくれる。


「みんな、これはアルティメットハンターズの新たな出発地点だ! 行くぞーっ!」


 リーダーの声に皆が答える。


「「「応っ!!!」」」


 皆が思い思いの場所へ走っていく。


 黒い霧からは両腕と頭が限界し、遂にその全容が現れるのであった。




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