第199話 ジークの奥の手


 静まり返る舞台にはジークの声だけが響いていた。


 誰もがジークの話す壮絶な話に聞き入っていたのだ。


「そうか……、それがお前の復讐、ということか」


 ジークを罠に嵌めた神への怒りが俺の中に込み上げ、気づけば剣を力強く握っていた。


「そうだ、ワシの怒りと仲間の無念、晴らすためにもこのトーナメントは勝たせてもらうッ!」


 ジークの聖剣がオーラを開放するように一気に解き放った。


 ビリビリと肌に刺すような痛みが襲ってくる。


 だが、RENには経験があった。過去により強大な敵としてソウと対決したのだ。


 あの時のソウのオーラに比べればまだマシというものだ。


 不思議と俺は落ち着いていたのだ。


「アンタに戦う理由があるように、俺にも戦う理由がある。すまないが、負けてやるわけにはいかない。ここで決着をつけてやろう」


 ジークはなりふり構わず勝ちに来るだろう。だがそれこそ望むところだ。茶番は終わりだ。全力で叩き潰してやる。


 俺は闘志を燃やし、ジークに対峙するのであった。


「ジークの凄まじい過去が明らかになりました! 神を滅ぼすというのは口だけではなさそうです! 対するRENも戦闘意欲は衰えていませんッ!」


「ここからが本当の勝負ですよ! ついに彼等の直接対決ですからね!」


 ジークの体が一瞬にして消えた。


 すぐに気配のある方へ剣を振り下ろす。


ガギィィィィィィィィンッッッ!!!


 ぶつかり合う二つの剣が火花を散らす。ジーク眼は赤くそして強く光っており、復讐にその魂を燃やしている。


 ジークはまた消えるようにその場から消え、今度は後から斬りつけてきた。


 だが、あいにく強すぎる殺気は居場所を教えているようなものだ。


 合わせるように剣を振り、またしても剣同士が、白い火花を激しく散らしていく。


「今度は俺の番だ!」


 また姿を消すように移動したジークだが、その移動途中へ攻撃を仕掛けていく。


「ぬぅ?! ワシのスピードについてくるか? 恐ろしい男よ!」


 ジークの出鼻を挫いたつもりだったが、難なく受け止められた。


 だが、ここからだ!


「おーーーっと! RENがここて仕掛けていくッ! 流れるような連撃の嵐だーーーッ!」


「凄いです! 一息で十発以上もの連撃ですよ? これほど早いのは見たこともありません! だが、ジークもこれを受けていくなんて流石としか言いようがありませんね!」


 くっ! まさか全て受けられるとはな……。


「クックック……とうした? 貴様の攻撃はこの程度なのか?」


「まだだっ! これでっ!」


 さらなる連撃を仕掛けていくが、ジークの対応力はずば抜けていた。


 俺の渾身の連撃を難なく防いでいくのだ。


「当たらなーーーいッ!!! ジークが、RENの攻撃を全て捌いていきます! 凄まじい攻防です!」


「やはり、この程度なのだな。この勝負……ワシがいただこうッ!」


 ジークは剣を両手で握り構えた。そして、魔法を展開した。


「む?……こ、これは?」


 妖しく光る剣はし周囲の魔力を吸い込むように吸収しはじめた。


「まさか、ワシの奥の手をここで使うことになるとは思わなかったぞ? 褒めてやろう。だが、最後に生き残るのはワシだっ! 貴様には消えてもらうぞッ!」


 あの剣……。間違いない。ブラックホールを剣に纏わせたのか?


「ジークの剣が光だしましたッ! 一体何が起こっているんだ〜〜〜っ!!!」


「あれはまさかッ! あり得ない! ブラックホールが剣に纏わり付いてますっ! 相手の魔力を吸い尽くすつもりでしょうか? だとしたら……RENに勝ち目はないかも知れませんよッ!」




 ジークはまた姿を消すように移動してきた。そして……、


 ギィィィィィンッッッ!


 相打つ剣と剣。だが……


「な、なんてことだっ! 魔力が吸われていくッ!」


 俺の体からゴッソリと魔力が抜けてしまい、軽い虚脱感を覚える。


 たつたの一合、剣を合わせただけで、これほど吸われるとは!


 恐らくだが、吸われた魔力は一割にものぼりそうだつた。


「ワシからも連撃をプレゼントしてやろう!」


 ジークが連撃を放ってきた。その連撃は打ち合う度に魔力を大量に吸われるのだ。


「くうっ!!!」


 ジークの連撃を受けて、今や俺の魔力は三割を切ってしまつた。その上……


 ビシィィィッッッ!!!


 俺の聖剣に大きなヒビが入ってしまったのだ。


「あああーーーッッッ!!! RENの剣にヒビが入りましたーーーッッッ! これではジークと打ち合うことは出来ませんッ! ついに、RENが、追い詰められた〜〜〜ッッッ!」


「これはかなりヤバイですね! あの聖剣からも魔力が吸われてしまったんでしょうね! もう魔力の残照すら感じません! あの剣はもう終わりです!」




 ヒビの入った俺の剣を見て、ジークはさらに目を光らせた。


「これで終わりのようだな……、人間にしてはよくやった。褒めてやろう」


 ジークは勝利を確信し、勝ち誇るように言い放つのであった。


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