第200話 RENの反撃
俺は持っていた剣をその場に置いた。
その姿を見て、ジークはゆっくりと近づいてきた。
「トドメを刺してやろう。ひと思いに死ぬがいい」
ジークは剣を上方から振り下ろした。だが……、
ガギィィィィィン!!!
「ぬうっ? なんだ? その剣はッ!」
驚いたのはジークだつた。俺はアイテム袋から一振りの刀を取り出したのだ。
それは刀身が黒く光る日本刀。刃はいくつもの波模様が複雑に絡み合い、見る者を虜にしそうなほどの美しさを持っていた。
そして何より特筆なのはその硬さであった。
ピシッ!
ジークの手元から何かが割れる音が鳴る。
それは神剣ヴォルグスネーガから放たれた音だった。それを見たジークの目がさらに赤い光を大きくした。
ヴォルグスネーガの刃はほんの僅かだが欠けていたのだ。
「そ……それは、一体?」
ジークの声色に初めて焦りの色が生じる。
これは元チームリーダー、リズの打った刀。製作者の魂が込められた、超越級の代物。俺が見てきた刀の中でも間違いなくトップクラスのものだった。
「これを抜いた以上、容赦はできんぞ? 覚悟を決めるがいい」
「ぬかせ! 覚悟なぞ、とうに済ましておるわ! ワシを妨げる者なぞ、許さんッ!!!」
激昂するジークとの激突は第二ラウンドへ突入するのだった。
「こ、ここで、RENの剣が、謎の刀になりました! 果たしてどれほどの刀なんでしょうか!!!」
「見たところ、前の剣よりも魔力は少ない……といいますか、全く感じないですね! とういった性質なのか? さっぱり検討もつきません! ジークのヴォルグスネーガにどこまで対抗できるのか? 注目したいですね!」
「ついに出たか……」
控室でつぶやくように言ったのはズールてあった。
「何か知ってるの? あんなの初めて見たんだけど……」
隣で面白くなさそうな顔つきをしていたのはイヴリスだ。
「あぁ、RENと組手をしていた時に見せてもらった。正直に言って、震えたよ。あれはこの世の
「
イヴリスだけでなくミリィも隣で眉を寄せていた。
「我には詳しい事はわからん。だが、あの刀はこの世のあらゆる物を斬る為に生み出された神剣、ということだ」
「あらゆる物を斬る……」
ミリィはなにやら難しい顔つきで顎に手を当てる。
「あぁ、試しに様々な攻撃を仕掛けてみたのだが、すべての攻撃がまるで通用せずに斬られたのだ。嘘みたいな話だろうがな。こればかりは本当のことよ。今に目の前で起きることが全てだ」
控室にいた三人はRENの取り出した刀を注視するのだった。
「テヤアアアァァァァッッッ!!!」
俺の刀とジークのヴォルグスネーガが撃ち合う度に煌めく金属片が僅かずつ飛び散っていった。
その金属片は全てヴォルグスネーガのものだった。俺の刀は刃こぼれはない。
ジークはその刃こぼれを見て開いた口が塞がらなくなっていた。
「RENよ、その剣は一体なんなのだッ! ワシのヴォルグスネーガが傷つくなどッ! ありえんッッッ!!!」
「この刀こそ、お前を死者の国へと送る神剣。その呪われし剣と共に葬ってくれよう!」
「抜かせっ! ワシは……ワシはッ!」
ジークは一旦距離をとり、自分の剣をじっくりと見つめた。
恐らく次の一撃は奴のありったけの力で打ち込んで来るだろう。もう、刃が削られてしまい、剣として使うのは限界が近いのだ。
「ジークが機を伺っているのでしょうか? じっと動きませんッ!」
「RENの刀は一体何なんでしょうね? まさかあのヴォルグスネーガを上回る剣があったとは……素直に驚きです! ジークは次が最後の剣撃になるかも知れません! なにしろ、刃が削れてしまってますからね!」
「このワシが、よもやここまで苦戦するとはな……。だが、ワシは諦めんッ! 必ずや神共に天誅を与えるまではなッ!」
ジークが襲いかかってきた。また姿を消すように移動し、俺のサイドから斬りつけてきた。それも今までのような斬り方ではない。体重を乗せきり、突進を兼ねた捨て身の一撃だ。
その素早い動きに対して、俺は最小限の動きだけで対応していく。
視界に映るもの全てがまるでスローモーションのように遅くゆっくりと動いていった。
俺は今、視えていた。舞台の動き全てが把握できるのだ。
そして、ジークの剣の軌道も、折り込んだフェイントも、足捌きも、全てがハッキリと視えていた。
ここだッ!
俺の刀は振り下ろされるジークのヴォルグスネーガに入っていた僅かな傷、そこに横方向からピンポイントでぶつかり合った。
キィィィィィィィン!!!
まるで上質のベルでも鳴らしたかのような美しい音色が舞台に広がった。
そして、ジークの遥か後方に回転しながら落ちていく刃があった。
それは地面に刺さり込み、動きを止めるのだった。
「ジークの、ヴォルグスネーガがッッッ!!! 折れました〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
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