第24話 ミーナの成長?



「ん……、朝か……」


 くっ、頭がグラグラするし、胸が気持ち悪い……。取りあえずヒールとキュアーだ。


「ふぅ、落ち着いた。さて、起きると……」


 起きようと手を下ろした所にムニュっと柔らかい感触が当たる。


「ん? 何だ? ってこ、これは!?」


 俺の右手はミーナの胸の上に乗っていたのだ。


 でも……、気になることがある。


 そう! ミーナはまな板だったのだ!


 昨日一日背負っていたから、これだけは断言できる。昨日まではミーナに胸の膨らみは皆無だったと。


 それがどうだろうか? この手に余るほどの膨らみ、この柔らかさ、この温かみ。どれをとってもおっぱいだ!


 俺は周りの酒瓶をかたづけると、時が経つのを忘れたように、しばし、その膨らみを丹念に揉みながら調べてみた。


 ミーナの体に、一体何があったというのか? 俺はこのミステリーの答えを探るべく、昨日に起こったことを思い返していく。


 昨日といえば、ミーナのレベルを上げて、このホテルに入り、酒を飲んだくらいだ。


 うーむ、どうやらレベルというのが、エルフの成長に絡んでるのだろうか?


 こればかりは検証しなければ……。


 そう思っていた時だった。


 ミーナの目がパチッと開いたのだ。


 もちろん、俺の手はミーナの胸の上。


 あ、まずい……。


「きゃあああああああああっっっ!!!」


 パチーーーン!


「ぐわぁっ!」


 ミーナの平手打ちが俺の頬を直撃し、俺の体は部屋を転がり、運悪く壁に激突。俺の意識はあっさりと消えてしまうのであった。




 「う……、ここは……」


「ソウッ! 目を覚ましたのね!」


 目の前にはミーナの心配そうな顔が間近にあった。


「ご、ごめんなさい。私ったら」


「あぁ、大丈夫さ。生きてればヒールでなんとかなるからな」


 そう言いつつ、自分にヒールをかけた。


「もう、ソウったら……。でもソウも悪いんだからね? 私が寝ている間にあんな……」


 ミーナの頬が赤く染まる。


「あ、そういえば、ミーナ。体に変わったことはないか?」


「えぇと……、その……」


 ミーナは視線を外し、口ごもる。


「ミーナの体が急に成長したような気がしたんだ」


「そ、そうみたい……なの」


「やっぱりか! 俺はレベルが関係しているんじゃないかと思ってるんだけど」


「そうなの?」


「あぁ、詳しくはわからないけれど、検証してみよう」


 俺は起き上がろうとした。が、頭の下に柔らかく、温かな感触に包まれていた。


 不思議に思って横を見ると、ミーナが膝枕をしてくれていたのだ。


 くっ、人生で初膝枕! ゲットしたぜ! またこの世界のコンプリートに一歩近づいてしまったな。


「ソウ? 泣いてるの?」


「え、あ、何でもないんだ。介抱してくれてありがとう。もう起きるよ」


 いかんいかん、膝枕してもらって涙が出てしまったのがばれてしまう。俺は紳士なんだ。


 俺たちは揃って宿屋を後にするのであった。




「ただいま」


 ミーナは着ていた服がピッチピチにキツくなってしまった為、服を買い換えてきたのだ。


「よし、行こうか」


「そういえば、私……。ホテルに入ってからの記憶がはっきりしないんだけど、迷惑かけなかったかしら?」


 ミーナが酒を飲み出したせいで大惨事だったことなんてもちろん言えるわけがないよな。


「あぁ、全く問題はなかったんだけど、ミーナが疲れていたせいか、すぐに寝ちゃったからね」


「それならいいんだけど……」


 しおらしくモジモジする彼女は昨日の姿からは想像もできない。


 これが女の二面性ってやつか……!


「じゃ、出発しよう!」


「えぇ!」


 俺たちは街を出て、国境を越えるとまたミーナを背負って走り出すのであった。


 背中に当たる柔らかさを感じながら。

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