第25話 モンスター同士の戦い


「わぁ、ここがエルフの住んでいる所なのか!」


「えぇ、みんな静かに暮らすのが好きだし、なにより森を愛しているのよ」


 三時間ほど全力で疾走していくと、目の前に広がったのは広大な森であった。


 そして、ここからでもわかるほどの大きさを誇る巨大な木が、遠くに見えている。


「あの大きな木が世界樹という木なの! あそこに私の生まれた村があるはずよ」


 ミーナの顔は晴々としていた。故郷に帰るのは久しぶりらしく、楽しみにしているようだった。


「よし、森も一気に行くよっ!」


「えっ? ちょっと待って、歩いていくんじゃないの!?」


「そんなことしてたら日が暮れちゃうよ」


「でも、こんな鬱蒼としてるし、人が一人歩けるだけの道しかないのよ?」


「大丈夫。任せてくれ!」


 俺はミーナを背負ったまま、大きくジャンプした。木の枝に立つと、すぐに隣の木の枝へジャンプして移動を開始した。


「うそ? こんな移動あり?」


 ミーナは背中で驚いているけれど、オーク達を倒しに行った時だってこうやって移動してたんだけどな……。ま、いいや。


「舌を噛むなよ?」


「え、えぇ!」


 次々とジャンプを繰り返し、遠くにあった世界樹はどんどん近くに迫ってきたときだった。


 鳥たちがいっせいに飛び立った。


「うわ! びっくりした!」


「何かあったのかしら? 鳥がこんなにざわつくなんて……」


「あ、あれはオークと、一体何だ? あれは……」


 数多くの鳥たちが一斉に飛び立った跡には魔物同士が戦っていた。


 片方の魔物はオークで間違いない。しかしもう片方の魔物は……、大型の蝙蝠だろうか?


 大型の蝙蝠らしき生物は全身を黒く長い毛に覆われており、長い翼をはためかせて空を飛んでいる。体長が大きく、オークにひけをとっていない。


 オークは体長三メートルといったところだが、大型の蝙蝠は二メートル以上は確実にある。翼が大きく、羽ばたくことによって暴風を起こし、オークは前に進めないどころか、目も開けられないように嫌がっている。


 そのオークは近くにあった岩を持ち上げ、オオコウモリに投げつけると、それをヒラリと躱し、オークに飛びかかった。


 巨体の魔物同士の決闘は迫力があり、周りの木々を軽くなぎ倒しながら二体が暴れ回る。


「おお、すごいな。オークも丸太を振り回して応戦してるぞ!」


「あの蝙蝠は素早いわね。丸太が全然当たらないわ」


 やがて蝙蝠がオークの懐に入り込み、口を大きく開けると、長い牙を首元に刺した。


「お? やっぱり蝙蝠だな。血を吸うのか!」


「ちょっと待って、オークの様子がおかしいわ!」


 オークはビクンビクンと全身を震わせ、やがて抵抗も出来ず、なすがままになってしまった。


 オオコウモリが牙を抜くと、オークの眼が赤く光りだした。


「こ、これは……?」


「何が起こっているの?」


 オオコウモリはまた羽ばたきだした。なんと、その後をオークがついていくのだ。


「操っているのか? 他の魔物を!」


「そうみたいね。気持ち悪い蝙蝠だわ」


「倒すか?」


「出来るの?」


「多分、大丈夫だろ? あんま強そうに見えないし。あ、先に魔法を当ててくれよ」


「うん。いつでもいいわ」


 素早く後を追いかけ、ミーナがオークにファイアーを当てると、それだけでオークは焼け死んだ。


「お? 一発で倒したか!」


「えぇ、でもまだ一匹残ってるわ!」


 オオコウモリがこちらにきづいて振り返るがもう遅い。


 さらにミーナがファイアーを当てると、全身火だるまになって墜ちていった。


「やったわ!」


「レベルを上げた効果が早速でてるね!」


「ありがとう! ソウのおかげよ!」


 笑顔で俺に感謝してくれるミーナ。


 しかし、今度は大規模な戦闘の音が聞こえだした。


「あ、あれは?」


「仲間のエルフ達だわ! さっきのオオコウモリやオークと戦ってる! いや、それだけじゃない。オオコウモリがいっぱいいるわ!」


 俺たちはすぐに戦闘音のする所へ急ぐのであった。



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