第4章 突撃! 魔界統一編 後編

第46話 優秀すぎる魔族達



 村に住む人数が爆発的に増えたので俺はエルガの軍が持っていた大量の大瓶にポーションを注ぎ、その後は一日中畑の拡張をした。何せ今の村には三万人以上が暮らすのだ。それだけの食料を確保できるようにしなければならない。


畑を作っていると、軍の家族の方々や、噂を聞きつけて引っ越してきた魔族達が次々と村に向かって訪れていくのが見える。このままでは、すぐに十万人以上の都市になりそうな勢いだ。


そこで、今日だけは一日かけて、数十万人でも賄えるだけの広大な畑作りに徹したのだが……、


「あれ? 昨日はテントばっかりだったはずの原っぱに家が建ってる!?」


 驚いた。どうやってわずか半日で家が建つんだ?


「ホッホッホ。大魔神ソウ様でもお知りにならないことがあるんですな?


 我々は魔族。もともと少しは魔法が使えるのですが、ポーションのおかげで魔力切れを気にせず作業できましてな。


 これくらいは朝飯前ということですじゃ」


 突然、後ろに現れた村長は誇らしげに語った。


「そっか。魔法を駆使して建ててるのか。ならポーションさえ切らさなければあっという間に街ができそうだな」


「ホッホッホ。ソウ様。街造りのほうを優先しておりますから、中心街はもう出来上がっておりますぞ?」


「え? ウソ?」


「ここは街外れの畑を管理する者の家ですからの。ちょっとばかり街から離れておりますし、畑が広いので家もまばらという訳ですじゃ」


「え? えぇ??」


 訳がわからず混乱してしまうな。え? だって朝にはテントだったんだよ? マジで!?


 俺は魔族のことをなんにもわかっちゃいなかった。彼らは人間よりも魔力が多く、魔法が得意なんだそうだ。そこにオーガ族も大量に入ってきたため、魔法だけでなく、力仕事まであっという間に終わってしまうそうだ。


 そこに俺のポーションのおかげで無尽蔵にMPとスタミナが続くとなれば街の建設など、造作もないってことらしい。


 以前、村の入り口には丸太を並べて作られた柵があったのだが、今では巨大な岩を石垣のように積み上げた、堀が出来ていた。


「え? ……ちょっと長老さん? 堀が出来てるの?」


「何を言うとりますじゃ。魔王様が住まわれるのは魔王城でございましょう。城に掘りはあって当然だというものですじゃ」


 いや、半日で堀が出来るなんておかしいでしょ! とツッコみたかったのだが、長老が真面目な顔で当然とばかりに語るのでツッコまなかったけどおかしくない?


 堀にかかる橋を渡ると、門番達が整列した。


「大魔神、ソウ様に礼っ!」


 オルガを始めとする門番達が一斉に敬礼する。


「そ、そんなに畏まらなくても……」


「いやいや、当然の対応ですじゃ。ソウ様は我々の神! ソウ様も少しずつ慣れていきませんとな」


「そ、そうか」




 街に入るとさらに驚きの連続だった。


 木を切り出したログで作った巨大な建物がズラリと並び、その中央には俺? を模した像が立てられていた。


「あ、あの……、これ……」


 その像はスタイルの良いスーツに身を包んだ。男が手に魔法の剣を持っている。顔の作りは少し堀が深く、誰が見てもイケメンで精悍な顔つきだ。


「ソウ様の石像ですじゃ。村の者が素手でビシビシと削って造った傑作でございますぞ!」


「明らかに本人よりイケメンすぎるだろ!」


「まぁまぁ、それより、城へご案内いたしますぞ」


「う、うぅむ」


 この村長、かなりやり手なのは間違いないんだが……、何か企んでないか?


 城といっても洋風の城ではなく、丸太を加工したログを積み重ねた大きな屋敷といった感じだった。


 それでも三階建てになっており、この街で一番大きな家になっていることは間違いなさそうだ。


「しっかし、器用に建ててるな」


「ホッホッホ。魔族は昔から器用でしての。まぁ、ドワーフ族ほどではないようですが」


 魔王城のドアが開くと、レイが飛び出してきた。


「旦那様! 帰られたのじゃな! 水浴びにする? ご飯にする? それとも……」


「いやいや、もじもじしないでくれよ!」


「おお、これは気が利きませんでしたな。年寄りはこの辺りで失礼しますぞい」


 いや、だからその変な気の使い方やめてくれよ! と言いたかったが、長老は一瞬で消えてしまった。


「ほらほら、今日からここで旦那様と暮らすのじゃ!」


 レイは笑顔で俺の背中を押してくる。


「あれ? 俺の使ってた小屋は?」


「ん? もうないぞえ?」


「え? 取り壊しちゃったの? あれで十分だったんだが……。えーとそれに、結婚前の男女が同じ家ってのは、マズいんじゃないかな? なーんで思うんだけど……」


 レイの顔がポッと赤く染まる。


「やだっ、旦那様ったら! でも妾、いつでも準備は出来ておるからマズいことなんて何もないのじゃ!」


「いやいやいやいや、そういう事はしっかり手順を踏んでからだな」


「以外と旦那様は考え方が古風じゃの。まぁ、今日はゆっくりご飯でも食べてくれ!}


「あぁ、まぁ……、そうしようか」


 なんだか、なし崩し的にここに住まわされそうだな。ちょっと不安になってきたぞ……。


 そうして、新生魔王国の一日目が過ぎていくのであった。


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