番外編
番外編 1 昔の夢
そう、これは夢。昔の……、
「今日こそ、決着をつけてやろう」
俺は意気揚々とライバルに対峙した。
「それはこちらの台詞よ。クックック、今日でランキング1位は俺のモノとなるのだ」
ファンタズムスターズにはバトルモードというものが存在した。当然、ライバル達はレベルカンストはもちろん、装備も全てSS級だ。
ここから先は人間と人間の本当のバトルが楽しめたのだ。
アルティメットハンターズを名乗る俺は当然、ランキング1位を目指し、このバトルモードにハマりまくったのだった。
相手の装備、癖、パターン、から次の一手を高確率で予測。先の先まで読み尽くし、封じ、潰していく。
60分の1秒を争う入力の正確性はもちろん、徹底的な反復練習と実践で磨き上げ、俺は悠々とランキング上位に駆け上った。
しかし、そんな俺の前に立ちはだかった男がいたのだ。
REN そう名乗るこの男は俺と対戦成績が全くの五分。
バトル大会が開かれれば、必ず俺か、RENが優勝するといった感じだったのだ。
俺はRENの攻撃パターンを全て覚えていたし、入力の正確性も問題ない。対戦した動画を何度も見て研究をし尽くした。
だが五分だったのだ!
かくなる上は腕ではなく、それ以外の部分で勝負するしかない。
そう! 今日はNKTが光回線のサービスを始めたのだ! 今までのADSLなんて目じゃないくらいのインターネット速度が出るのだ!
もちろん俺は契約開始日、朝9時に速攻で契約を申し込み、まさに最速で光回線を引いたのだ! そう! 全てはRENに勝つために!!
ニィッ、っと俺の口角が上がる。
「REN。破れたり!」
決まった! 奴に引導を渡す宣言だ!
永かったランキング争いも今日で終わりを迎えるのだ!
「クックック……ハーッハッハ! ウワーハッハッハッハ! それはこちらの台詞よ! 今日よりランキング1位は不動で俺のモノとなるのだ!」
RENはすぐに言い返した。
やけに自信満々だな。だが! 俺の秘策で勝利は揺るがない!
先ほど、他のランキング上位者を軒並みノックアウトしてきたばかりなのだ。そう! 俺に光回線があれば鬼に金棒!
「バトルスタート! レディ、ゴーーーーーーッッ!!」
ついに対戦の火蓋が切って落とされた。
俺はRENの行動全てを読み切っている……勝てる……はず!
俺のハンドガンが奴を捉えた。
が! 奴もまた、俺を捉えていた。
相打ち。だが、勝負はまだまだだ。
俺は素早く武器をラスト・カノンに入れ替える。
奴は武器を極アギトへ入れ替えた。
正に想定通りの行動。それが貴様の最後になるのだ!
俺の特殊攻撃、ラストインパルスを喰らえ!
が!! 奴も極真斬を放ち、相殺されてしまった!
「なに?」
「なんだと?」
二人の台詞が交錯するが、俺はその間にも武器をガルーダ・ミラへ入れ替えた。
「これで止めだ!」
ガルーダシュート 数々のSS級武器の中でも反則級の威力を持つため、初、中級者に使うと嫌われるこの技も、この男が相手ならば遠慮は無用!
「ガルーダシュート!!!」
決まった! 正に最速のタイミングで奴の動く先へ放ち終えたのだ!
が!!! またしても相打ちとなってしまったのだ!
結果は両者ノックアウトによるドロー。
「何故だ? 何故勝てない? おいっ! REN! お前インチキしてないか?」
「そんなことするわけねーだろうが!
「むぅ! だって俺は! お前に勝つために光回線を最速で引いたんだぞ! お前の回線よりずっと速いはずなんんだ!!! お前のラグ中に俺の攻撃が刺さって終わるはずだったのに!」
「なん……だと……?」
「はっ! ま……まさか!」
「くっそおおおおおおおおっっっ!!! 貴様に勝つためだけに光回線を最速で申し込んだのに!!! なんてことしやがるんだ!!!」
「それは俺の台詞だ!! 高かった工事費を返せ!」
そこに乱入者が現れた。俺のチームメイトの霞さんだ。
「あらあら、どうしたの? いつにも増してヒートアップしてるじゃない?」
「はぁっ、はぁっ……」
「ふぅっ、ふぅっ……」
「ま、二人ともホントに似た者同士なのね」
「「そんなことないですっ!」」
「……そういうことにしておきましょうか……。ところでRENくん……、例の話なんだけど、考えてくれたかしら?」
「ん? 例の話? 何ですか? それ」
霞さんがRENに話をしていたなんて初めて聞いたんだけど……。
「もちろんですっ! 俺っ、霞さんに着いていきます!」
「んんん~~~???」
「じゃ、決まりね! ありがとう。私、強い人を探してたのよ!」
「まっかせて下さい! バトル1位の力、霞さんのチームで発揮してみせますよ!!!」
「えええ!!! うそでしょ!?」
「ホントよ。これでアルティメットハンターズがバトル1位を独占ね!」
「はいっ!!!」
RENの目が……マジだ。俺はこっそりRENにメールを送ってみる。普通のチャットだと霞さんに聞かれるし。
(おい、REN。お前……もしかして……霞さんに惚れたのか?)
すぐに返信がくる。
(おう! この間、霞さんと激アツのトークしたんだよ。それで俺は気付いたんだ! 霞さんなら俺を解ってくれる! 俺の全てを!!!)
(そ、そうか……)
奴は知らない。同じ事を思ってる者が他に数人いることを……。
アルティメットハンターズが荒れる予感をヒシヒシと感じるのであった。
そう、これは昔の夢の話。
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