第45話 新魔王国の夜明け
「大変だ~~~~! 敵の軍勢が来たぞぉ~~~!」
けたたましい叫び声が村に響くと、村人たちはすぐに俺の泊まっていた小屋の前に整列した。
「ふわぁ~~、おはよう。敵が来たか」
「はっ、どうやら、昨日のエルガの軍のようです。いかがいたしましょうか?」
長老が俺の前にきて恭しく礼をしながら聞いてきた。
「うーん、エルガならもう争う気はないと思うが、万が一のことがある。油断だけはするなよ」
「「「はっ!」」」
村人たちはただちに展開した。ってか、もうこの村人たちにとって敵などあってないようなものだろう。
「旦那様! 大変じゃ! 敵が近づいてきておるぞ!」
レイも慌てた様子で言い寄ってきた。
「あぁ、どうやらエルガの軍らしいな。俺も感知したよ」
「エルガ……、やっかいな奴が来おったわい。奴はこと武力に関しては魔界随一の実力じゃ」
「あぁ、知ってるよ。昨日闘ったんだ」
「へ? き、昨日? 闘った?」
「あぁ、ドウムが突っ走っちゃって、エルガと一騎打ちしてたんだが、残念ながら敗れてね。それで俺が助けに入ったんだよ。その時に少しだけエルガと話したから、たぶん話し合いにでも来たんじゃないか?」
「さ、さすが旦那様じゃ! もう先手を打ってあったとは!」
「ま、一緒に行ってみよう」
ノーラもすぐに合流し、俺たちは三人で村の外へ向かった。
「ソウ殿。昨日は本当に世話になった」
エルガは俺たちに会ってすぐに頭を下げた。
「旦那様、昨日は一体何があったのじゃ? エルガは簡単に頭を下げるような男ではないぞ?」
「ほら、村を襲ったモートンって奴がいただろ? 奴がエルガの娘を人質に捕っていたんだ。それを解放しただけさ」
「なんと! そうであったか。エルガは裏切るような男ではないと思っておったのじゃが、だからこそ驚いたのじゃ」
「閣下。言い訳などない。処罰は全て受け入れる所存だ」
「あいっかわらず無愛想な奴じゃのう。処罰もなにもない。また妾の元へ帰ってきてくれただけで嬉しいぞ!」
「しかし、魔王閣下を嫁にもらうとは、なんとも豪気な男だな、ソウ殿は」
「ん? あはははは……、まぁまぁ、それはそれとして、レイ、ちょっといいかな? エルガは俺のチームに誘いたいと思ってたんだ」
「なぬ? ふぅむ……確かにここの村人たちがいれば戦力には事欠かんじゃろうが、しかしなぜじゃ?」
「あぁ、俺はチーム、アルティメットハンターズの一員なんだ。エルガのような男は是非ともウチのチームに欲しいと思ってね」
「アルティメットハンターズ?」
「あぁ、この世界のレベルを全てカンストさせることに始まり、秘宝、秘術、秘技、ありとあらゆる物事を極め尽くしていくチームなんだ」
「カンスト? とはなんじゃ?」
「カウンターストップ。もうこれ以上レベルが上がらない状態のことさ」
「な、なんとも豪快な。ちなみに旦那様のレベルはいくつなのじゃ?」
「俺? もちろんカンストしてるよ。9999だ。神聖魔法も9999。だけど闇魔法と風魔法は7000位で止まっちゃっててね」
「なんと! わ、妾でも7500程度じゃのにそれほどのレベルだったとは!」
「フゥム。ソウ殿の言うアルティメットハンターズ、興味深い。……誘いは嬉しく思う。だが、我はソウ殿との対決で自らの未熟さを思い知ったばかり。また一から鍛え直そうと思っていたのだ」
さすがエルガだ。あれほどの武術を持っていながらさらに磨き上げようとするなんて……。うん、決めた! やっぱりエルガは勧誘するしかない!
「修業先に丁度良さそうな場所がある。俺のチームメイトがいる所なんだが、どうだ? そこに行ってみないか?」
「ほぅ、我の修行にいいと申すか。面白い!」
「じゃ、決まりだ! すぐに連絡を取るよ。あ、言っとくけれど、霞さんのやることは半端じゃないからね?」
「望むところよ」
さて、話がまとまったところで霞さんに連絡だ。この世界は俺に神からメールが届いたように、チームとして繋がっているメンバーには魔力を使って言葉を届けることが出来ることがわかった。
これも霞さんから教えてもらっただけなんだけど。今のところ、メールを送れるのは霞さんだけだ。ミーナは今、霞さんの組んだメニューをこなし、着実にレベルアップしているらしい。
霞さんってばホントに頼りになるなぁ。
「霞さんへ
元気してました~? 無事に魔界につきまして、魔王に結婚を申し込まれました。今はなんとか躱して? ますけど……。
あ、武術が相当なレベルのオーガ族の神がいるんですけれど、そっちに送りますね! 鍛え上げちゃって下さい!
会えば、きっと気に入ると思いますよ!
ソウより」
よし、こんな感じでいいか!
後は……、
「ヌゥううううううん!!」
手のひらを会わせ魔力を集め、一カ所にまとめ上げると、俺は闇魔法、”ダーク・ミスト・イリュージョン”を発動させた。
この魔界に来るため、黒い霧の中へ飛び込んだとき、黒い霧の魔力構成を真似したのだ。
「こ、これは……! 浮世の扉! 自力の魔法で発動させたというのか? 妾の旦那様はとんでもないお人じゃ!」
「まさか、これほどとは……、いや、もう何が起ころうと驚くまい。ソウ殿。感謝する!!」
エルガは飛び込んだ。
行き先は霞さんのいるエルフの国にしてあるけれど、びっくりしないかな? 大丈夫だよね? メール送ってるし。うん。気にしないでおこう。
エルガの軍三万が村に到着したあと、その家族や噂を聞きつけた魔族がどんどん集まってきた。そして、家の建築がどんどん進み、畑、牧場はあっという間に広がっていく。
新たな魔王の国が生まれようとしているのだった。
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