第148話 召喚獣同士の対決



 ジークが詠唱を始めるや否や、デーモン・ロード達が一斉に攻撃を放っていく。だが……、


「くっくっく、当たらんのぅ。少し、スピードが足らんのではないかね?」


 ジークは3体のデーモン・ロードの攻撃を躱し続ける。パンチ、キック、魔法といった遠距離攻撃まで、ジークの身体をかすることすらない。


「くっ、貴様ぁ!」


「こ、これはーーーっ! デーモン・ロード達の繰り出す攻撃を、リッチであるジークが躱しています!!!」


「デーモン・ロード達は囲んで攻撃しているんですが、これはもう後ろに目がついてるとしか思えない俊敏な動きですね! リッチという魔法職にはありえない動きの素早さです!」


「君らの攻撃は殺気が強すぎる……そんな攻撃ではワシに一撃を与えるのは無理じゃろ……、お? ワシの詠唱も終わったぞ? 君らの遊び相手に丁度良いのがおるんじゃ。良かったのぅ。好きなだけ遊んでもらうと良い!」


 ジークが大きく後方へジャンプして距離を取ると、杖を中心におどろおどろしい魔方陣が描かれる。その黒い半液体で描かれた魔法陣が妖しく光りだす。




「ジークも召喚魔法の詠唱を終えたようです! 果たして、どのような召喚獣が出てくるのかーーーっ!」


「ジークの魔方陣も凄まじい大きさです! イヴリスのものに決して引けを取りません! 強烈なモンスターが出てくるのは間違いないでしょう!」




 ジークを取り囲むように顕現したのは3体。正面には首のない全身鎧を着込んだアンデッドが大盾と剣を構え登場した。左右には魔法使いの様な黒いローブを着込んだスケルトンが2体現れた。


 ジークの左右に2体現れたスケルトンはいずれも大きな杖を取り出し、魔法の詠唱をはじめる。




「な、なんと! 正面に出た召喚獣はあの伝説に伝わるデュラハンではないでしょうか??? だとしたら災害級では済まない……ですよね?」


「あ、あ……。デュラハン……、デュラハンです! あの超災害級モンスター、デュラハンが現れるなんて! ジークの召喚魔法、恐るべし! デーモン・ロードとなんら遜色ないモンスターの出現に驚いてしまいました!」


「デュラハンといいますと……」


「えぇ、我々天使族20000で冥界に侵攻した際、冥界の門に立ち、一人で闘った、あのデュラハンです! 私ことローファンもその時、一緒に攻めていたのですが、あまりの強さに逃げ帰ったのを今でもしっかりと覚えております! その時亡くなった天使の数は16000以上! デュラハン1体を倒すことも出来なかったのです! しかも、ジークの部下のデュラハンはネームドの個体! あの時の個体よりも大幅に強さが増しているのは明白です! これはとんでもないことになりました!」




「くっくっく……、かっかっか! 行けい! 我が右腕。モンドよ! 奴らの首をとってまいれ!」


 モンドと呼ばれたデュラハンのないはずの顔の部分がボゥッと炎が立ち揺らめく。ジークの意思に反応したかのようにデュラハンは動き出した。




   ***




「マズいな……」


 デーモン・ロードは果敢に魔法や体術で攻め込むもデュラハンの鉄壁の防御の前に全て防がれていく。そして、後方に出現した2体の魔法使いタイプのアンデッド……。


 こいつらは間違いなくリッチだ。メイジスケルトンとは格が違う。まさか、リッチであるジークが同じリッチを召喚獣として従えているとはな……。


 後方に現れたリッチ2体は次々と魔法を放っていき、デーモン・ロード達に確実にダメージを蓄積させていく。


「なんだなんだ、俺には関係ないとか言ってたくせに! イヴリスのこと心配してるんじゃないか!」


 隣でムスッとしながら頬を膨らませる金髪ボーイッシュ系美人が顔を近づけてくる。


 せっかく五月蠅いイヴリスがいなくなったと思ったのだが……、イヴリスとコイツ、キャラがかぶってないか?


「俺はイヴリスの心配なんぞしてはいない。だが、予想していたよりもジークの強さが気になっただけだ……」


「そう? まだ五分って所じゃないのかい?」


「いや、ジークの吸収魔法だが……、こいつは魔法使いタイプには相性が悪すぎる。イヴリスは直接戦闘が得意ではなさそうだったしな。だから召喚なんて回りくどいことをしてスキを狙ったのだろうが、ジークにも強力な召喚獣がいたとなれば話は変わる。これはイヴリスに厳しい闘いになりそうだと思ってな……」


「その言い口からしてもイヴリスばっかり応援してるじゃない! せっかくボクが隣に来たってのに! 少しは構ってよ!」


「全く、何を言い出すかと思えば……、子供か?」


「んもーーーっ! これでも絶世の美人って言われてるんだよ? そんな究極の美人が君と話したいって言ってるんだよ? 興味ないの?」


「ない」


「むっきーーーっ! あったまきたーーーっ! 絶対にこっち振り向かせてやるんだから!」


 俺の心ははニュートへの復讐で頭はいっぱいなのだ。それにズールを打ち破ることが出来れば、イヴリスやジークと対戦する可能性もあるのだ。遊んでいる暇などない。キュイジーヌも少しは大人しくなってくれればいいのだがな……。


 俺は徐々に追い詰められていくイヴリスたちをモニターで見つめるのであった。


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