第192話 二回戦第三試合 決着
「バ……、バッジが膝から崩れ落ちたーーーッッッ!」
舞台は赤い水たまりができ、広がっていく。
急速に失われていく血にワシは立っていることすら出来なくなってしまった。
ズドォ……。
「あああーーーッ! バッジの生命反応が、微弱となっております! これはもう立ち上がることは出来ないでしょう! 勝者、天使族代表ッ! ルシフェルッッッ!!!」
大歓声が一瞬にして舞台を包み込む。
「いやぁ、バッジも相当な手練だったことは間違いありません。ですが、ルシフェル先輩の圧倒的な強さで、マーリンに続き、バッジも難なく下しましたね!」
「さぁ、トーナメントの二回戦も残す所、一試合ということになりましたッ! これまでベスト4に残っているのはいずれも猛者ばかりと言っていいでしょう! 圧倒的な強さをほこる者たちが残っていきます! それに次のギガースとニュートの勝者が残る1枠を賭けて、激突するわけです! これは期待してしまいますね! それでは舞台の整備が始まります」
***
控室のドアが開いた。
「ぐうぅぅ…………、だ、誰だ……」
ワシは最悪、死を覚悟した。控室に運ばれ、傷に包帯を巻かれたのはいいが、それ以上の手当てはなかったのだ。そんな中で声も出さずに誰かが来たのだ。
なんとか目を開けて、首だけ上げると、そこには黒い鎧を着た騎士が一人、立ってこちらを見下ろしていた。
「な……なにしに来やがった?」
全く面識のない黒騎士の乱入に冷や汗が吹き出し、体が冷たく感じる。
「野暮用でね。アンタ……、リズになんの用があるんだ?」
リズ? リズって言ったのか? コイツは?
「まさか……、知ってるのか!?」
ワシはこの小刀を制作者を探すためこのトーナメントに参加したのだ。そして、ついにその手がかりをこの黒騎士が持っていたのだと思うといても立ってもいられなく、上半身を起こそうとした。
「ぐぅぅ!」
だが、激痛が走り、動くことができない。
「質問に答えろ。何の用があって探している?」
まったく……、こっちは激痛で動けねぇってのによ、せっかちな野郎だ。だが、このチャンス、逃がすわけにいかねぇ。
「そのリズとやら……、間違いなくワシより遙か高みにいる鍛冶師にチゲぇねぇんだ……。ワシは教えを請いたい。どうすればこれほどの剣が打てるのか? それを知らずに死ぬわけにはいかねぇんだ!」
渾身の力を振り絞り、叫んだ。
こいつが何か知ってんなら、それを聞かずに死ぬわけにはいかねぇんだ。
「そうか……」
黒騎士はワシの目をじっと見つめてきた。
ワシのこの想いをわかってもらいたい。死ぬ前の最後の望みになるかも知れない。だが、それほどにワシの心を捉えて離さないこの小刀の作者に会いたいのだ。
黒騎士が手を伸ばしてきた。何らかの魔法だろう。ワシの視界が真っ黒に染まり、体が浮き上がるような、不思議な感じに包まれた。
「これは……???」
「少しの間、そこで我慢していろ」
黒騎士の低い声が聞こえると共に、ワシの意識が途絶えるのだった。
***
「東の方角ッ! 巨人族代表ッ! ギガースッ!」
「さぁ、いよいよ二回戦最後の試合が始まりますッ! 先に入場するのはギガース。一回戦ではグレンを寄せ付けない圧倒的な強さで勝ち進みましたッ! 果たして二回戦はどう戦うのか? ローファンさんはどう見ますか?」
「そうですね、一回戦は傷ついたものの、もう回復は充分でしょうから、万全な状態であることは間違い無いでしょう。そうなると、後は相性の問題が出てくるでしょうね」
「相性ですか?」
「えぇ、ギガースがどれだけ剣を使う戦士と戦い慣れているのか? ここがポイントの一つかと思います。ニュートは非常に素早く、そのスピードもパワーもグレン以上のものがありますから、これをあのモーニングスターと呼ばれる武器でどこまで抑えられるのか? ギガースの本気が見られそうですね!」
「ギガースの本気ですか! 確かに見たいですね! さぁ、今、地響きを鳴らしながら、ギガースが入場しました!」
「西の方角ッ!
『クックック……。行こうか、相棒……、今度は巨人狩りだ』
ニュートが持つ
『ニュートよ……、復習の機会をくれたこと、感謝するッ!』
グレンは力強くニュートに答えた。
ニュートは口の端を吊り上げ、舞台へと向かっうのだった。
「さぁ、ニュートが入場して参りましたッ! 一回戦では見事、優勝候補の一角、バハルを下し、この二回戦に駒を進めてきた猛者でありますッ! 一回戦でも使用していたあの長い刀をひっさげ、やってまいりました!」
「あの刀なんですが……、どことなく大きくなってる気がするんですよね」
「大きく? ですか! うーん……、確かに一回り大きくなっている感じですかねぇ?」
「えぇ、一回戦ではニュートの身長ほどはなかったように見えたんですがね、今は2メル以上もある感じですよ。魔力で大きさでも変わるのか? 詳しいことはわかりませんが、不気味な存在と言っていいでしょうね」
「なるほど……、さぁ、両者が舞台に上がりましたッ! お互いの視線が交錯するッ! 果たして強いのはどちらなんだッ!」
「二回戦第四試合……、レディ……………………ゴーーーーーーーーーッッッ!!!!!」
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